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お酒を飲める人、飲めない人(アルコール代謝の話#2) [科学系よもやま話]

お酒を飲む機会が増えるシーズンってことで、前回は、お酒の弊害(悪酔い・二日酔い・肝臓へのダメージ)は、エタノールそのものではなく、代謝の際にできるアセトアルデヒドによる物だというお話をしました。

今回は、お酒が飲める・飲めないを決めているアセトアルデヒド脱水素酵素についてのお話です。

さて、アセトアルデヒド脱水素酵素 (ALDH) は、ミトコンドリア外の細胞質に存在するALDH1と、ミトコンドリア内に局在するALDH2が知られています。このうち、アセトアルデヒドの分解には、アセトアルデヒドに対する親和性が高いALDH2が使われ、高濃度にならないとALDH1は働きません。

このALDH2は、517個のアミノ酸からなるたんぱく質である事が分かっています。実はこの517個のアミノ酸のうち、487番目のアミノ酸がグルタミン酸かリシンかの違いで、アセトアルデヒドの分解能力に大きな差があるんです。
ALDH2.jpg
図中の活性部位を拡大すると下図。
NAD.jpg
この酵素の設計図はALDH2遺伝子と呼ばれ、第12染色体にあります(因みに前述のALDH1は遺伝子は、第9染色体にあることが知られています)。
この第12染色体にあるALDH2遺伝子のたった一箇所の変異が、アセトアルデヒドの分解能力、つまりお酒が飲める人と飲めない人の違いを生んでるってわけ。
 その変異とは、487番目のアミノ酸コドン(アミノ酸を決める塩基配列)がGAA(グルタミン酸)かAAA(リシン)かによる違いです(※上の図でGlu399と記載されているのがグルタミン酸からリシンに変異が起こる部分です)。G(グアニン)がA(アデニン)に置き換わると、出来るアセトアルデヒド脱水素酵素の活性が低くなり、アセトアルデヒドの代謝能力が殆どなくなるんです。遺伝子は二本対になっていますから、組み合わせは3種類となります。二本ともG(グアニン)というGG型。一方がA(アデニン)になっているAG型。そして、二本ともA(アデニン)というAA型です。

GG型の代謝能力に対し、AG型は1/16の能力しか無く、AA型は代謝能力が殆ど0・・・。つまりAA型の人はエタノールを少量摂取しただけで、アセトアルデヒド濃度が急激にあがってしまうのに対し、GG型は沢山飲んでも(どんどん代謝されて酢酸になるから)アセトアルデヒド濃度が上がらないんです。

ところで、第12染色体って?染色体のどのへんにあるの?という疑問があるかもしれません。そのうちまたご紹介する事もあると思いますが、『ヒトゲノムマップ(リンク)』(制作:京都大学大学院 生命科学研究科 生命文化学研究室)を使うと、なんとなくイメージしやすいと思います。なかなか面白いので、試してみてください。

核酸の塩基配列が、たった一箇所違うだけで、お酒に強かったり、弱かったりする・・・なんとも不思議な感じがしませんか?
貴方は、どのタイプでしょう?簡単にチェックできる方法がありますので、次回ご紹介しますね。

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北海道大好き人間

私の場合、お酒は飲めるのですが、「何でも来い」というわけではありませんが、それはどこから変わってくるのでしょうか?
by 北海道大好き人間 (2010-06-14 22:17) 

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