シャボン玉の色の話＃２（色と光の話 第１８回）

前回、シャボン玉の七色が干渉色によるものだというお話をしました。

そこで、今回は干渉色について理論的な説明を少しお話したいと思います。シャボン玉の表面に光が反射する時に、図の様に、膜の表面で反射する光と、膜の内側で反射する２つの経路が考えられます。

この２つの経路で重ね合わせた波が打ち消しあう場合は、光が弱くなり、強め合う場合は強くなります。この強めあう波長の色が干渉色です。

どの波長が強めあうのかを考えるのに説明しなければならないものが３つあります。
一つが行路差、、二つ目が位相、三つ目が屈折率です。

行路差は、膜の内外それぞれで反射する光の経路の長さです。つまり、Ｂ→Ｄ→ＥとＡ→Ｃ→Ｄ→Ｅの距離の差です。単純に考えれば、この差が波長の長さと一致していればその波長の光は強められる筈ですね。

しかし、そう単純な話ではありません。詳しい説明は省きますが、Ｂ→Ｄ→Ｅの経路をとって膜の表面で反射する光は、固定端反射となり位相がπずれます。これに対して、Ａ→Ｃ→Ｄ→Ｅの経路をとって膜の内側で反射する光は自由端反射となり位相はずれません。
位相とは、ひとつの周期中の位置の事です。位相がπずれるとは、山と谷がちょうど反転した波形になる事を指します。即ち、表面で反射した波と内側で反射した波は、波長の半分の長さだけずれる事になります。
よって、行路差に波長の半分を加える必要があるんです。

更に、これだででは、まだ足りません。屈折率が大きいという事は、その媒質の中での波の速さが遅い。つまり波長も短くなるんです。空気からシャボン玉の膜に光が進む時の相対屈折率をＮａｓとすると、波長が短くなる分、実際の行路差としては、波長が短くなる分を考慮してＮａｓ×行路差とする必要があります。

ここで、実際に図中の行路差を求めると、行路差＝２×Ｄ×cosθとなります。
※Ｄは膜厚（ｎｍ）を表します。

よって、干渉により強まる角度θの光の波長（λ）は、
λ＝（２×Ｎａｓ×Ｄ×cosθ）／（ｍ＋０．５）（※ここで、ｍは０，１，２・・・）となるのです。

この式から膜厚が厚くなる程、長波長の光（赤）が強められ、薄い程短波長の光（青）のが強められるのがお分かりになるかと思います。
またこの式は、θが９０°すなわち垂直のときはcosθ=１ですから、もっと単純に
λ＝（２×Ｎａｓ×Ｄ）／（ｍ＋０．５）（※ここで、ｍは０，１，２・・・）
と表す事ができます。

シャボン玉の場合は、相対屈折率が１．３～１．５程度です。仮にＮａｓ＝１．４とすると、
膜厚（Ｄ）＝λ×（ｍ＋０．５）／（２×Ｎａｓ×cosθ）ですから、垂直に当たった光で考えると、７００ナノメートルの波長の光（赤）が強められるのは、膜厚（Ｄ）＝１２５ナノメートル，３７５ナノメートル，６２５ナノメートル・・・の時という事になり、角度θが４５°ならばcosθ=1/（√２）ですから、膜厚（Ｄ）＝１７７ナノメートル，５３０ナノメートル，８８３ナノメートル・・・となります。

そして、シャボン玉の膜の厚さは、重力の影響で下に行くほど厚くなっています。この違いから、場所によって強く見える色が変り、虹のようなリング状の模様が現れるんですね。

因みに、もっと膜厚が厚くても７００ナノメートルの波長の光は強められます。しかし、同時に他の波長の光も強められるため、結局白色光として認識されてしまい、虹色には見えません。
つまり、シャボン玉の厚みが数マイクロメートル以上になった時、或いは数１０ナノメートル未満になった時には七色には見えないという訳です。

なんて微妙な領域に、ぴったりとシャボン玉の厚みがあることかと驚くばかりです。

参考資料：独立行政法人 物質・材料研究機構　ナノテクＫＩＤＳ『シャボン玉と光のお話（リンク）』

タグ：干渉色 シャボン玉

コメント 3

なんという偶然でしょうか。自然は美しいですね。これは美しくないのですが、水に浮くガソリンが七色なのはどうしてなのでしょうね。水の上のガソリンの厚さがこの範囲で微妙に違うと言うことでしょうか。
by yablinsky (2010-05-01 05:56) 

yablinsky さん、こんばんは。
ガソリンの薄膜の七色も干渉色ですよ。
本当に、偶然とも言える自然の美って感じですね。
by optimist (2010-05-02 00:45) 

あのシャボン玉にも「科学」があるのですね。
たった今、日本が勝ちました。次はオランダ戦ですが、今日の反省（たとえば終盤のスタミナ切れ）を踏まえてほしいものです。
by 北海道大好き人間 (2010-06-15 00:54)