SSブログ

抗ガン剤研究の道照らす、光るサンゴ礁群を発見 オーストラリア [科学系よもやま話<新薬・新技術>]

ガン細胞の標識剤として蛍光物質を利用するというのは、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士の研究で、広く一般にも知られるようになりました。

以前は、細胞内でリアルタイムで何が起こっているのかを見る技術は殆ど存在しませんでした。それが、蛍光物質を標識剤として着色する事で、特定のタンパク質や細胞の所在を追跡することができるんですから、ガン研究に対する貢献の大きさが分かるというものです。
また、その後の研究で、生体細胞内でのみ発光する標識剤が開発されるなど、改良が進んでいます。これにより、癌細胞がどのように血管の中を移動し、どこで急激に増殖したかや、抗がん剤の効果を直接観察できるようになりました。

さて、初期は、ウミホタルやクラゲの蛍光タンパクを抽出していましたが、この記事にあるようなサンゴから蛍光タンパクを抽出されたのは、1998年ロシア科学アカデミーの分子生物学者セルゲイ・ルキアノフらによります。その中でも重要な発見となったのが(RFP:Red Fluorescence Protein)と呼ばれる赤い蛍光を発するタンパク質の発見です。赤い光は組織の深い部分の観察に役立つからです。それは、なぜでしょう?

分かり易いのは、童謡「手のひらを太陽に」の歌詞にもあるように、手のひらを太陽に透かして見ると、赤く見えるという事です。太陽光に含まれる赤以外の可視光が手のひらに吸収されて、赤い色を感じる長波長側の光が透過するから赤く見える。実は、赤以外の可視光は、血液に吸収されてしまうんです。そのため体の深部まで透過しません。しかし、赤い光は血液による吸収は少ないので、それだけ深い場所まで届くという訳です。他にもレーザーポインターを指に当てて、反対側からみても分かり易いですね。※くれぐれもレーザー光は直視しないで下さいね。
ここまで聞いて、疑問に思う人が居るかもしれません。「深い海だと水に吸収されてしまう赤い光が届かず、青く見える・・・本当に赤い光って深くまで届くの?」と。

実は、波長が700nmを超えた光は水に吸収されます。特に900nmを超えると急に吸収量が増えるんです。ですから、透明度の高い海では、深いところになると赤い光が吸収されてしまいます。
しかし、人間の体の場合、水だけでなく、血液による吸収の方が遥かに大きいので、結果として赤い光が最も透過しやすいというわけ。これが近赤外を超えて、遠赤外線の領域にまでなると、水による吸収が大きくなり、やはり人間の体を透過し難くなります。

つまり、人間の体を透かして見るには、赤や近赤外の光が一番良いのです。だからかそ、赤い蛍光を発するタンパク質が重要って訳です。
今では、赤色を始め、様々な色の蛍光タンパク質が実用化されています。また、これらの蛍光タンパク質は、ガンだけでなく、脳の病気などを解明するためにも利用され、世界中の研究室で、様々に利用されているんですよ。

nice!(7)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 7

コメント 2

北海道大好き人間

レーザーポインターでなくても、懐中電灯の光る部分を握るだけでも赤く透けて見えますね。今はやりのLED電球だとどうなのかな??
by 北海道大好き人間 (2010-08-21 01:33) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
よほど強い光源で無い限り、赤色に透けるはずですよ♪

by optimist (2010-08-21 22:55) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。