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太陽活動低下で大気圏上層の「熱圏」が縮小、米研究 [科学系よもやま話]

米国立大気研究センター(National Center for Atmospheric Research:NCAR)が、太陽からの紫外線が減少したため、地球の熱圏が大きく縮小し、温度も下がっているいう論文を発表したとニュースになっていました。

この論文は、米地球物理学連合(American Geophysical Union)が発行する学会誌「地球物理学研究レター(Geophysical Research Letters)」に掲載されたものです。

近年、太陽黒点や太陽風がほとんどない状態が長期間続き、太陽から受けるエネルギーが低い水準にあるのは、NASAを始め複数の機関が発表しています。例えば2008年にNASAが発表した太陽風が過去50年で最弱というニュースもありました『Solar Wind Loses Power, Hits 50―year Low(リンク)』し、今年の7月にも圏の縮小について報告しています『A Puzzling Collapse of Earth's Upper Atmosphere(リンク)』。

1995年から2009までの黒点サイクル
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Credit:David Hathaway, NASA/MSFC
※更に過去の黒点記録は、百科事典『ウィキペディア』の『太陽黒点(リンク)』でも見る事ができます。

NCARによれば、この太陽活動の低下の影響で、熱圏が小さくなり、2008年時点で過去の黒点サイクルで同じような極小期にあたる1996年比でも30%減(-41℃)を記録。過去43年の探査史上、もっとも急激に気温が下がっているんだそうです。まあ43年だと4サイクル(※黒点数は約11年周期)分のデータしか無いので、これがどれだけイレギュラーなのか判断するのは難しそうですが・・・。

熱圏とは、高度約80~800kmにある大気圏上層です。太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子のエネルギーを吸収するため温度が高く、2000℃まで上昇することもあるので、熱圏と呼ばれます。

地球って2000℃の層に覆われていたのか~と、びっくりされる方もいらっしゃるかも知れません。なんと言っても2000℃と言えば、製鉄所の溶鉱炉並ですから・・・。しかし熱圏の温度は、あくまでも分子の平均運動量によって定義されています。熱圏まで行くと、そこにある分子の密度は非常に低いので、鉄を溶かしてしまう事もありません。
分かり易い例としては、蛍光灯がそうです。蛍光灯内のプラズマの温度は1万度になっていても、中のガスの密度が低いため、触っても火傷しないのと同じことです。
(参考:ITER:国際熱核融合実験炉のWeb Siteより『核融合炉の安全性について(リンク)』

さて、今回の熱圏縮小→氷河期の到来という主張もあるかも知れませんが、私個人としては懐疑的です。
とは言え、太陽活動が従来より弱い事、熱圏の縮小が起こっている事は確かです。今後の続報が気になります。

ところで、私のブログに訪れていらっしゃる方は、既にご存知だとは思いますが、同じSo-netブログのMANTA さんによる『海の研究者(リンク)』では、太陽活動を含め、総合的に地球温暖化についての議論を解説されています。『地球温暖化を学ぼう』のカテゴリは、データリンクの豊富さだけでなく、非常に分かり易い内容ですので、お勧めです。
「地球温暖化を学ぼう」の最新記事は、コチラです。
1940~70年頃のプチ寒冷化の原因は?
前回の温暖化関連の連載で、1900年以降の気温の上昇トレンド(=地球温暖化)はおそらくは近年の工業化に伴う現象であろうと書きました。でもよく見れば1940~70年頃は気温が上がらず、むしろ下がり気味。



タグ:NASA 太陽
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コメント 6

北海道大好き人間

>さて、今回の熱圏縮小→氷河期の到来という主張もあるかも知れませんが、私個人としては懐疑的です。

私もそう思います。これが事実ならば、今夏の異常な猛暑は一体どう説明したらいいのでしょうか??
実際、地球温暖化と言われているくらいですからね。

by 北海道大好き人間 (2010-08-31 12:43) 

yablinsky

氷河期が来るということは、みんなで努力して温暖化ガスを放出しよう!と、これまでの温暖化への努力が無になるようなこともあるかも知れませんね。
by yablinsky (2010-08-31 22:28) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
1年単位で温暖化だ氷河期だと言う気はありませんが、本当に今年は暑いですね^^;
我が家の冷房費も高くて困ります。
by optimist (2010-09-02 00:19) 

optimist

yablinsky さん、こんばんは。
いずれにしても、再生産可能な持続型社会への転換は必要だと思いますから、無駄にはならないでしょう。
温暖化ガスが必要なら二酸化炭素じゃなくメタンガスでも放出してやる方が効率的でしょうしw
by optimist (2010-09-02 00:21) 

MANTA

当ブログのご紹介とトラックバック、ありがとうございます。
地球のことをわれわれ人間は実はよくわかっていません。
CO2をばらまくと結果として寒冷化になるかも??(そんなことはない
と思いますが) 今後もいろいろ調べてみたいと思います。
よろしくお願いいたします。
by MANTA (2010-09-02 06:24) 

optimist

MANTA さん、コメントが遅くなり申し訳ありませんでした。
よくブログへはお邪魔させて頂いていたのですが、コメントしていなかったので、「はじめまして」でしょうか?
また、トラックバックを頂き、ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願い致します。これからも、記事を楽しみにしています。
by optimist (2010-09-06 22:05) 

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