スーパーカミオカンデ [科学系よもやま話]
昨日ご紹介したカミオカンデの後を継ぐべく建設された、スーパーカミオカンデですが、スーパーカミオカンデにもドラマがありました。
2001年に光電子増倍管の6割を損失するという大規模な破損事故に見舞われたんです。
1996年の実験開始から5年間運用され、数々の成果を出してきたスーパーカミオカンデに不運が襲ったのは、2001年11月12日のことです。7月中旬から不具合がでた増倍管の交換作業が進められました。増倍管の交換作業が終了し、超純水を約30m まで満たしたその日、大事故が起きたんです。底面のある一基の増倍管が爆縮(増倍管し、それが生み出した衝撃波がその隣の増倍管を壊し、連鎖反応によって一気に6,777本の光電子増倍管が破壊されました。装置は元々11,146本の増倍管を使用していたそうですから、実に全体の約60%を失う大事故です。
トリガーとなった光電管が破損した原因は、補修作業時の負荷で基部にクラックが入ったからではないかと結論づけられています。事故調査の結果、爆縮時には、瞬間的に100気圧近い圧力が発生していたそうです。
この大事故は、ほんの数秒で、約20億円が失われたとあって、大きくニュースで取り上げられたのを覚えています。
実は、特注の光電子増倍管は生産に時間がかかり、全ての光電管を用意するには4年もの時間が必要でした。
しかし、研究の空白期間を作らぬよう、事故の翌年には光電子増倍管に時衝撃波防止ケースによる防爆措置を行った上で、予備を加えた5200本の光電子増倍管を再配置し、約47%という部分復旧が行われたんです。全ての増倍管は、入念な目視による検査、高電圧を引加しての信号チェックが研究者によって行われ、また3月から行われた排水、残骸撤去作業では、総量数十トンものガラスや金属片をタンクから運び出したそうです。
この再建作業に際して、日本のいろいろな大学の理工学系学部学生、大学院学生にボランティア作業の応募が行われました。87名のボランティア学生を加えた作業は、極めて順調に進められ、10月始めまでには増倍管の取り付け作業が完了したそうです。
予算が無いなら、研究者が補おうという雰囲気が感じられ、現場の熱意が伝わってくる話です。折りしも復旧が行われた直後に、小柴博士のノーベル賞受賞を受けるという僥倖にも恵まれたのは、神様のご褒美でしょうか?
その後、2005年に完全再建作業も行われ、現在はフルスペックで運用されているわけですが、事故から約1年という短期間で観測が再開されたことで、研究が継続できたたのは素晴らしい事だと思います。
2001年のスーパーカミオカンデの事故だけでなく、2003年のH-ⅡAロケット打ち上げ失敗の時も、100億円が一瞬で失われたと騒いだりと、この時期バブル景気後の不況やITバブルが崩壊したという外的要因も多かったと思いますが、やたらと科学技術バッシングがあったような気がします。
今もまた、不況の中「事業仕分け」が進んでいます。削るべき所は削るというのは必要でしょう。しかし、科学技術を疎かにしては、日本の未来は明るい物にはならないと思います。
スーパーカミオカンデ事故からの奇跡の復旧のタイミングで小柴博士のノーベル賞受賞、そして、はやぶさ2の予算削減の後にはさぶさの奇跡の帰還劇。成果があると、叩きまくっていた事など忘れたように、やはり日本の科学力は素晴らしいと、手のひらを返して褒め称えます。
所詮、世の中そんな物なのかも知れません。やはり、成果を出し続ける事が科学技術への予算獲得の近道なのかもしれませんね。
2001年に光電子増倍管の6割を損失するという大規模な破損事故に見舞われたんです。
1996年の実験開始から5年間運用され、数々の成果を出してきたスーパーカミオカンデに不運が襲ったのは、2001年11月12日のことです。7月中旬から不具合がでた増倍管の交換作業が進められました。増倍管の交換作業が終了し、超純水を約30m まで満たしたその日、大事故が起きたんです。底面のある一基の増倍管が爆縮(増倍管し、それが生み出した衝撃波がその隣の増倍管を壊し、連鎖反応によって一気に6,777本の光電子増倍管が破壊されました。装置は元々11,146本の増倍管を使用していたそうですから、実に全体の約60%を失う大事故です。
トリガーとなった光電管が破損した原因は、補修作業時の負荷で基部にクラックが入ったからではないかと結論づけられています。事故調査の結果、爆縮時には、瞬間的に100気圧近い圧力が発生していたそうです。
この大事故は、ほんの数秒で、約20億円が失われたとあって、大きくニュースで取り上げられたのを覚えています。
実は、特注の光電子増倍管は生産に時間がかかり、全ての光電管を用意するには4年もの時間が必要でした。
しかし、研究の空白期間を作らぬよう、事故の翌年には光電子増倍管に時衝撃波防止ケースによる防爆措置を行った上で、予備を加えた5200本の光電子増倍管を再配置し、約47%という部分復旧が行われたんです。全ての増倍管は、入念な目視による検査、高電圧を引加しての信号チェックが研究者によって行われ、また3月から行われた排水、残骸撤去作業では、総量数十トンものガラスや金属片をタンクから運び出したそうです。
この再建作業に際して、日本のいろいろな大学の理工学系学部学生、大学院学生にボランティア作業の応募が行われました。87名のボランティア学生を加えた作業は、極めて順調に進められ、10月始めまでには増倍管の取り付け作業が完了したそうです。
予算が無いなら、研究者が補おうという雰囲気が感じられ、現場の熱意が伝わってくる話です。折りしも復旧が行われた直後に、小柴博士のノーベル賞受賞を受けるという僥倖にも恵まれたのは、神様のご褒美でしょうか?
その後、2005年に完全再建作業も行われ、現在はフルスペックで運用されているわけですが、事故から約1年という短期間で観測が再開されたことで、研究が継続できたたのは素晴らしい事だと思います。
2001年のスーパーカミオカンデの事故だけでなく、2003年のH-ⅡAロケット打ち上げ失敗の時も、100億円が一瞬で失われたと騒いだりと、この時期バブル景気後の不況やITバブルが崩壊したという外的要因も多かったと思いますが、やたらと科学技術バッシングがあったような気がします。
今もまた、不況の中「事業仕分け」が進んでいます。削るべき所は削るというのは必要でしょう。しかし、科学技術を疎かにしては、日本の未来は明るい物にはならないと思います。
スーパーカミオカンデ事故からの奇跡の復旧のタイミングで小柴博士のノーベル賞受賞、そして、はやぶさ2の予算削減の後にはさぶさの奇跡の帰還劇。成果があると、叩きまくっていた事など忘れたように、やはり日本の科学力は素晴らしいと、手のひらを返して褒め称えます。
所詮、世の中そんな物なのかも知れません。やはり、成果を出し続ける事が科学技術への予算獲得の近道なのかもしれませんね。
成果を常に効率的に出し続けることは、不可能でしょう。
失敗も大きな成果だと思います。
by アヨアン・イゴカー (2010-10-24 14:37)
>事故から約1年という短期間で観測が再開されたことで、研究が継続できた~
「たられば」ですが、小柴教授のノーベル賞がなかったら、どうなっていたでしょうか?
スーパーカミオカンデの事故も、H-ⅡAロケットの打ち上げ失敗も、一般市民のレベルでは考えられない額のお金が一瞬で消え去ったわけですが、それが国民からの税金を元にしているので、叩かれるのはやむを得ない部分もあります。
そんなことを言ったら、「防衛予算なんかはどうなんだ」という声も聞こえてきそうですが。
手のひらを返す様に絶賛(あるいは逆に酷評)するのは、サッカーのW杯等にも当てはまるのではないのでしょうか。
by 北海道大好き人間 (2010-10-24 18:08)
研究者は税金を無駄にしない努力は必要ですが、失敗しない研究ばかりすると無難な研究になりがちで、科学の発展はありません。やはり冒険には失敗がつき物だということを社会が認識する必要があります。
by yablinsky (2010-10-24 18:46)
アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
失敗は、成功の母。
まさに仰るとおりです。
私も、そう思いますが、実際に研究をしている人間は、「成果を出す!」という強い意志を持って欲しいという事、「失敗そのものを無理やりでも成果に結びつけるプレゼンテーション能力」を実につける必要があるのかもあしれないという事を言いたかったんです。
結局、予算をつける人間が続ける事が「失敗は、成功の母」と思わなきゃ、研究が続けられないのは、本当に悲しい事ですね。
by optimist (2010-10-25 22:26)
北海道大好き人間 さん、こんばんは。
小柴教授のノーベル賞がなかったら・・・本当に、どうなってたでしょうね?
それにしても、国が富んでいる時は良いですが、経常赤字の場合、どうおりあいをつけるのかは、これから悩ましい問題になりそうですね。
by optimist (2010-10-25 22:28)
yablinsky さん、こんばんは。
>失敗しない研究ばかりすると無難な研究になりがちで、科学の発展はありません。
本当に、仰るとおりだと思います。
社会が、失敗は必要だという考えを持つまでの間、研究者は研究だけでなく、予算を獲得する詐欺的テクニックを持つ必要があるのかもしれませんね。
まあ、今までだって、口先三寸で予算を獲得してくる教授というのは居たような気がしますが^^;
by optimist (2010-10-25 22:30)