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ダダチャ豆と香米の香り成分 2-アセチル-1-ピロリン [科学系よもやま話<香りの話>]

ダダチャ豆と香り成分が香米と同じというお話を昨日致しました。香り米と言えば、丁度、国立科学博物館で、香米『恋ほのか』を配布しています。

そこで、ダダチャ豆と香米で2-アセチル-1-ピロリンが生成される理由について、もう少し詳しくご紹介しようと思います。

ダダチャ豆については、昨日ご紹介した論文
Plant Biotechnology Journal『Deficiency in the amino aldehyde dehydrogenase encoded by GmAMADH2, the homologue of rice Os2AP, enhances 2-acetyl-1-pyrroline biosynthesis in soybeans(リンク)』

香米については、以下の論文を参考にしました。
PNAS Early Edition『The origin and evolution of fragrance in rice (Oryza sativa L.)(リンク)』

まず、どちらも香りの主成分は、同じ2-アセチル-1-ピロリンです。そしてどちれも遺伝子欠損が原因でこの成分が作られています。
2-アセチル-1-ピロリンはγ‐アミノブチルアルデヒド(4‐アミノブタナール)から生成されますが、大豆でも米でも、本来は酵素の働きによってγ‐アミノ酪酸(GABA)に分解される代謝機構が働いているので、2-アセチル-1-ピロリンは、殆ど存在しません。この代謝系は、植物の細胞分裂やタンパク質合成に関係するプトレシンなどのポリアミンを分解するもので、以下のような物です。
ポリアミン代謝系.jpg
図中のγ‐アミノブチルアルデヒドを酸化する酵素が、γ‐アミノブチルアルデヒド脱水酵素(γ‐アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ)。ダダチャ豆では、この酵素を作る遺伝子の1つ、GmAMADH2が変異してしまっています。その結果、ポリアミンの代謝経路が変化し、香り成分2-アセチル-1-ピロリンが生成されるそうです。

対して、香り米では、同じくγ‐アミノブチルアルデヒドに活性を持つアイソザイム、ベタインアルデヒド脱水酵素を作る遺伝子の一つ、BADH2が変異しています。その結果、ダダチャ豆と同様、ポリアミンの代謝経路が変化し、香り成分2-アセチル-1-ピロリンが生成されているんだそうです。

香り米のBADH2変異については、stochinai氏のブログ、5号館のつぶやき『香り米はジャポニカ種で酵素遺伝子が壊れて生まれた(リンク)』で、分かり易く説明されていますので、是非ご覧になって下さい。

既に遺伝子が特定されている訳ですから、大豆や米の特定品種に香りをつける遺伝子組み換え、或いは人工的に交配させた上で、遺伝的検定で選抜をして、香りのついた新品種を作る事も可能でしょう。
なんだか凄い世の中になりましたね~。
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コメント 2

北海道大好き人間

>なんだか凄い世の中になりましたね~。
この一文が、全てを如実に物語っていますね。
大豆を使っている製品には「遺伝子組み換えでない」という表示がありますが、そのうちに全ての食品がそうなるのかも知れません。

by 北海道大好き人間 (2010-11-05 12:16) 

optimist

遺伝子組み換えと人工交配、自然交配、突然変異・・・人の手の介在する程度が違うだけで、結局同じ遺伝情報を持つ種が出来る可能性はある訳で、遺伝子組み換えを避けてりゃそれで良いってものでも無いと思います。
まあ、人それぞれの考えがあるでしょうけど^^;
いずれは、皆少なからず遺伝子組み換えされた種を栽培する事になるような気がしますね。
by optimist (2010-11-08 23:04) 

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