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イソ吉草酸(3‐メチルブタン酸) [科学系よもやま話<香りの話>]

イソ吉草酸
ペンタン酸(別名:吉草酸)の異性体である3‐メチルブタン酸(別名:イソ吉草酸)は、足の裏の臭いとか汗臭さ、或いは加齢による口臭と形容される、非常に不快感を伴う刺激臭を持つ物質です。臭覚検査では、腐敗臭や汗臭いにおいとされます。

ところが、このイソイソ吉草酸をエステル化したものは、香料として広く使用されているんです。下式のように、エチルエステルになると、アップル、メロン、ストロベリーなどの果実系香料になるんだから、不思議でしょう?
3-メチルブタン酸.jpg
有機酸は不快な臭いなのに、そのエステルは好ましい匂いになる。実は、このような例は他にもあります。

例えば、n‐ブタン酸(酪酸)です。酪酸と言えば、調査捕鯨船団に対し投げつけられたというニュースで聞いた事があるかもしれません。この酪酸、皮膚や粘膜に対する腐食性があり、水生生物にも有害な物質で、日本では環境中への排出を禁止されています。それを仮にも環境保護を主張する人間が投げつけるってのは、なんだかな~と思っちゃいますが・・・。

話がそれました^^;
この酪酸、最初にバターから得られたのでこの名が付いたのですが、銀杏臭の原因であり、非常に臭いです。
ところが、イソ吉草酸と同じように、エタノールでエステル化してやって得られる酪酸エチルは、パイナップルの香りを有する香料になります。実際にパインアップルやストロベリーの果実系香料に使用されるそうです。
香料に使われるエステル類としては、他にも酪酸エチル や、フェニル酢酸エチルなど、多種の物質が知られています。
香料.jpg

さて、話をイソ吉草酸に戻します。
この成分は、カスミソウの花に微量含まれるそうで、この臭いに敏感な人が苦手とするそうです。
ところで、カスミソウの英名が「Annual baby's breath」なのは、赤ちゃんの吐息のような臭いがするからだそうです。実は、赤ちゃんの吐息にも僅かにイソ吉草酸が含まれるそうで、昔の人は、分析に頼らず、その嗅覚で嗅ぎ分けていたんだな~と感心しちゃいます。
※参考『案山子庵雑記(リンク)』生物の話『生物学のための基礎化学(官能基)』
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北海道大好き人間

端的に、はき通した靴下に硫酸とアルコールを加えると香料になると言う理屈でいいのでしょうか?
勿論、割合とかもありますので、そう簡単にはいかないのでしょうけれども。

by 北海道大好き人間 (2010-11-21 15:42) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
はき通した靴下の臭いと形容されるだけで、実際には、他に多くの成分が含まれているはずです。特に不飽和脂肪酸など・・・
恐らく、エステル化しても香料にはならないかと・・・。
でも、実際どうなるのかやってみたら面白いかもw
by optimist (2010-11-27 22:17) 

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