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新鉱物『千葉石』 [科学系よもやま話<新鉱物>]

今日ご紹介するのは、千葉県内で採取された新鉱物が、国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会にて、『千葉石(Chibaite)』として承認されたというニュースです。
chibaite.jpg
提供:独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)

詳しくは、独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS),独立行政法人 産業技術総合研究所,千葉県立中央博物館,東北大学などによるプレスリリースをご覧下さい。
天然ガスを含む新鉱物『千葉石』(pdfファイル)』

英科学誌Nature Communicationsに掲載された論文は、コチラ(※Full Text は、有料です)。
New silica clathrate minerals that are isostructural with natural gas hydrates(リンク)』

都道府県の名前が付いた鉱物は、滋賀石、岡山石、新潟石、東京石、大阪石(発見順)に次いで6つめ。とは言え、日本産の新鉱物として登録された物は、100以上あり、地名に由来する名前を持つ鉱物(例えば、津軽鉱、南部石、多摩石、湯河原沸石、大隅石 、魚釣島石、etc・・・)も少なくありません。あくまで都道府県名を冠する鉱物が6つめって事。

とはいえ、県内で初となる新鉱物。千葉県立中央博物館では特別展示を開催中です。
千葉県立中央博物館 平成22年度トピックス展『新鉱物発見!名前は「千葉石」!(リンク)』
会期は2011年2月16日(水)~6月12日(日)。興味のある方は、千葉石が直接ご覧になれる、千葉県立中央博物館を訪れてはいかがでしょう。

千葉石を説明するには、天然ガスハイドレートの構造から話を進めるのが、分かり易いです。
メタンハイドレートを始めとする天然ガスハイドレートは、水分子で出来た直径1ナノメートル程の籠に、メタンやエタン、プロパンなどの天然ガスを閉じ込めた物質。今回発見された千葉石は、この水分子(H-O-H)の骨格を二酸化珪素(O-Si-O)の骨格に置き換えたような構造を持っています。

天然ガスハイドレートは閉じ込めたガス分子の種類によって、籠の形状が異なり、自然界ではⅠ型、Ⅱ型、H型の3種類の存在が確認されています。籠の中に入る分子の大きさで結晶構造が変わるんです。
例えば、小さなメタンやエタンならⅠ型、プロパンならⅡ型、もっと大きなペンタンならH型という具合。

水分子が珪酸に置き換わった千葉石のような鉱物は、これまでⅠ型しか知られていませんでしたが、新たにⅡ型、H型(まだ申請前)が千葉県で発見され、このような鉱物も天然ガスハイドレートのようにⅠ型、Ⅱ型、H型の3種類が存在する事が、初めて証明されたんです。ただ、O-HとSi-Oの距離が違うので、同じゲスト分子でも天然ガスハイドレートとは取る結晶構造が一致するという訳では無いようです。

それぞれの結晶構造は、籠の大きさや数が異なります。図にするとこんな感じ。
構造1.jpg
51262という表記は、五角十二面六角二面体という意味(つまり12個の五角形と2個の六角形からなる立体)です。頂点にSiが占め、それを結ぶ辺がSi-O-Siの結合です。籠の中には、ゲスト分子が閉じ込められています。そして、それぞれの籠が下ような組み合わせで単位格子を作ります。
構造2.jpg

実際にこれらの籠が並んだ状態が、論文に掲載されていたこちらの画像になります(a:Ⅰ型,b:Ⅱ型,c:H型)。
ncomms1196-f1.jpg
※Nature Communications 2,Article number:196 (15 February 2011) Figure 1

因みに、今回新鉱物として認められた千葉石は、Ⅱ型構造。ゲスト分子として、主にメタンの他、エタン、プロパン、2-メチルプロパンの4種類の炭化水素分子が含まれていることが確認されています。
Ⅰ型構造を撮る鉱物として、これまでにメラノフロジャイト(Melanophlogite)(別名:黒珪石)と呼ばれる鉱物が、知られていました。メラノフロジャイトの名前は、「燃えて黒くなる」という意味のギリシャ語からきているそうです。
そして、H型も千葉石と同時に発見されているのですが、現在国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会への申請準備中で、鉱物名はまだ確定していません。
こちらの登録結果も楽しみですね。



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コメント 3

ruya

これは・・・!石研としては是非見に行きたいです(笑)。
展示期間も長いので、暖かくなったら行って来ようと思います♪
by ruya (2011-02-16 22:58) 

北海道大好き人間

メタンとエタンとプロパン(ブタンもかな?)が同じ構造であることだけは覚えていますが、これに火を近づけたら爆発したりするのでしょうか?

by 北海道大好き人間 (2011-02-17 01:35) 

optimist

ruya さん、こんにちは。
結晶自体は小さいし地味な印象ではありますが、私も是非見に行こうと思っています。

北海道大好き人間 さん、こんにちは。
メタンとエタン、プロパン、ブタン・・・は炭素数が増えるだけで、直鎖型の炭化水素です。次第に沸点が低くなり常温で液体になっていきます。
因みに、火を近づけても煤けはするようですが、爆発する事はないようです。
by optimist (2011-02-20 09:56) 

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