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地球とエウロパの海底熱水噴出孔 [科学系よもやま話<宇宙の話>]

今日は、昨日ご紹介した熱水噴出孔の話題から発展して、日本惑星科学学会誌に掲載された、広島大学 生物圏科学研究科の准教授、長沼 毅氏によるエウロパの海底熱水噴出孔に関する考察をご紹介しようと思います。

特集「太陽系におけるアストロバイオロジー」『地球とエウロパの海底熱水噴出孔(pdfファイル)』(日本惑星科学学会誌Vol.20,No.2,2011)

この中で、地球上で確認されている熱水噴出孔についての知見を紹介すると共に、木星の衛星として生命の存在が期待されているエウロパにあるであろう熱水噴出孔について、考察を進めています。

非常に面白い内容でしたので、ぜひ一度ご覧になってみて下さい。論文中では、エウロパの内部構造が、表層のみ氷でその下は海という可能性がもっとも高いとされる、木星とその衛星系の起源と進化を探るための国際共同ミッションLAPLACEの評価結果が紹介されています。

つまり、地球のように、海底に熱水噴出孔があるような場所があるかもしれないわけです。
著者によれば、地球では、熱水噴出孔は「還元力の供給源」という点に生命論的(具体的にはエネルギー代謝論的)な意義があるのに対し、エウロパでは逆に、酸化力の供給と固定という点で、注目すべきではないかと考えられるそうです。

というのも、地球の表層では20億年以上もの間酸素に満ちた大気下で、酸化的環境であり続けています。有酸素呼吸をする生物が繁栄し、我々人類もその一員です。参加的環境が当たり前なので、熱水噴出孔のような水素や硫化水素、メタンなどの還元的物質を吐きだす、酸化還元勾配を生みだすエネルギー代謝の泉を、生命のオアシスとして魅力を覚える。
これに対し、エウロパではむしろ酸化力の供給に乏しいので、熱水噴出孔は必ずしもオアシスのような生命の泉ではないかもしれないというのです。そして、その価値はエウロパの酸化力源として機能し得るという点にあると考えているというのです。

エウロパの探査が進んだ時、そこにどのような世界が広がってるのか・・・その映像を目にする日が来るのが楽しみですね。

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コメント 4

david

深海での熱水噴出など、地球にはさまざまな現象がありますね。

by david (2011-10-07 08:16) 

北海道大好き人間

月以外の天体に行ったことがない人類が実際にエウロパまで行けるの何時になるのでしょうか?
SFアニメでは、さも近所みたいな描写ですが、光の速度でも半日かかる場所ですからねえ。


by 北海道大好き人間 (2011-10-07 11:20) 

optimist

david さん、こんばんは。
本当に、様々な環境・現象があって驚くばかりです。
そして、なにより驚くのは、様々な極限環境であっても、ほとんどの場合生命が存在しているという事実だったりします。
by optimist (2011-10-07 22:49) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
人間がそこに到達する日が来るのは、ちょっと何時になるかはわかりませんが、探査機が送り込まれる日は、私が生きている間にありそうな気がしています。
でも、確かに現在の推進システムで考えると、外惑星系って遠いですよね。
by optimist (2011-10-07 22:52) 

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