SSブログ

「暴走星」が明らかにする星の故郷 [科学系よもやま話<宇宙の話>]

今日ご紹介するのは、鹿児島大学のプレスリリースから、昨年『Hubble catches heavyweight runaway star speeding from 30 Doradus』で、ご紹介した星団から逃げ出した星に関する研究についてです。
大質量星はどこで生まれたのか?「暴走星」が明らかにする星の故郷(リンク)』
the Origin of OB Runaway Stars (リンク)』(Science DOI: 10.1126/science.1211927 )

写真の星団R136は、推定で数百万歳という若い星達の集まりですが、我々の太陽と比べると、質量が100倍、表面温度が約10倍もある若い高温の巨星です。これらの星々はあまりに密集しているので、当初は一つの星だと思われていた程です。

この密集した巨星達が互いに重力を及ぼしあった結果、星団から放り出された『逃亡星(と推測される星)』が発見された訳ですが、国立天文台とライデン大学のスーパーコンピュータのスーパーコンピュータシミュレーションで、この逃亡のメカニズムが再現されたそうです。
シミュレーションによる暴走星の質量分布が、実際に観測されている上の写真の大マゼラン雲のタランチュラ星雲内の暴走星の質量分布と良い一致を見たのだとか。
 
heic1008a.jpg
Credit: NASA, ESA, J. Walsh (ST-ECF) Acknowledgment: Z. Levay (STScI) Credit for ESO image: ESO Acknowledgments: J. Alves (Calar Alto, Spain), B. Vandame, and Y. Beletski (ESO) Processing by B. Fosbury (ST-ECF)
この画像は、チリの欧州南天文台(ESO)で撮影された物で、白い枠内がハッブル望遠鏡が捉えた画像だそうです。
暴走星を生み出す仕組みとしては、これまでに主に2つの説が考えられていました。「連星の一方が超新星爆発を起こし、残る一方が高速で飛びだす」という物と、「若い星団の中にある連星の効果」とする物です。

このシミュレーションは、後者を支持するもので、星団から星がはじき出される仕組みはこんな感じ。
星団が作られ、力学的に進化すると中心の星の密度が非常に高くなり、大質量星が中心に密集します。すると星同士の重力相互作用の結果、お互いの重力で強く束縛された連星ができます。
更に、この連星に他の星が近付くと、それまで周期的な軌道運動をしていた連星は不安定となり、最終的に三個の星のうち一つが高速で星団の外へ弾き出され暴走星となると言うのです。
大質量星が集まっている中心部から弾き飛ばされるため、暴走する星もまた、大質量星の場合が多いという事なんだとか。

更に、シミュレーション結果は、銀河系内の暴走星に関しては、R136よりも小さめの星団での誕生を示唆するものだったそうです。星や星団が作られる仕組みの解明に、また一歩近づいたと言えるかもしれませんね。

nice!(8)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。