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「キメラ」アカゲサルが誕生!? [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日ご紹介するのは、アメリカ ONPRC(Oregon National Primate Research Center:オレゴン国立霊長類研究センターの立花真仁研究員らが、世界で初めてキメラ」のアカゲザルを作ることに成功したというニュースです。
この研究成果は、アメリカの科学誌Cell(電子版)に掲載されています。
Generation of Chimeric Rhesus Monkeys(リンク)』

4細胞期の胚を3~6個を混ぜて凝集させて、5匹のサルの子宮に戻したところ、内2匹から双子を含む計3匹のオスの子ザルが生まれたのだそうです。その内の1匹は、6個の胚からなる(つまり1つの個体に6体分の遺伝情報を有する)ことからロクと名づけられたのだとか。残る2匹は、「ヘックス」と「キメロ」。

ところで、遺伝子工学におけるキメラって何だかご存知ですか?
多分、多くの方がキメラ胚、クローン胚、ハイブリッド胚等の違いをご存じないのではないかと思います。でも日本では、広く一般にその倫理的問題などが議論される事もないまま、実はその成果を享受しているんですよ。

まず、ある個体と同一の遺伝情報を持つ個体をクローンと呼びます。クローンの細胞は全て同じ遺伝情報を持っています。
これに対し、一般にキメラとは、異なる複数の生物体の細胞を含む固体を指します。今回のアカゲザルの場合、本来なら兄弟になるはずの胚を混ぜて凝集させ、これを子宮に戻して成長させたので、ロクは1固体なのに6種類の遺伝情報を持つ細胞を持っています。
また、ハイブリッドは、二つの異なる種の間での異種交配の結果生み出されたものです。オスライオンとメストラのハイブリッドであるライガーや、オス豹とメスライオンのハイブリッドであるレオポンという名前を聞いたことがある方はいらっしゃるかもしれませんね。ハイブリットさせる方法は、人工交配であったり、人工授精であったり様々です。

何れも、人の手が加わる事で、その倫理的な問題点が指摘される技術です。また、これらを掛け合わせた技術も存在し、キメラハイブリッドや、あるいはそのクローン体なんて事も可能です。

ところで、記事のハイブリッドの技術ですが、何故こんなキメラ胚を作る技術が研究されるのでしょう?
その一つの理由は、特定の遺伝子を不活性化させた「ノックアウト」マウスを作製するために必要な技術だからです。「ノックアウト」マウスは、肥満、心臓病、不安神経症、糖尿病、パーキンソン病などの研究目的で使われています。
他にも、ヒトの細胞、例えば肝細胞をマウスに作らせるなどの目的にも使われます。
前者の場合は、同種のキメラ胚、後者の場合は、(人とマウス、人とウサギ等の)ハイブリッドのキメラ胚を作る事になります。

いずれにしても、現在このような研究により、様々な薬や治療法の開発が進められているのが現状です。
個人的には、この種の技術に戸惑いを覚える方もそうでない方も、その成果と実態を知ったうえで、議論が進むことを期待します。



タグ:遺伝子工学
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北海道大好き人間

「合いの子」よりも難しいということだけは分かりました。
遺伝子操作の技術は、我々の想像を超えていますね。

by 北海道大好き人間 (2012-01-11 15:09) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
どんどん技術が進歩していますが、我々の感覚が付いていけなくなっている面はある気がしますね。
by optimist (2012-01-19 23:41) 

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