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発電器官を持つ魚類の平行進化 [科学系よもやま話]

南米とアフリカに生息する発電器官を持つ魚が、それぞれの大陸で、ほぼ同じ時期に同じように電気を発する能力を発達させてきたとする説についてご紹介します。

これを発表したのは、千葉県立中央博物館の宮正樹・動物学研究科長らによる国際研究チーム。科学誌「PLoS ONE」に論文が掲載されています。
Comparable Ages for the Independent Origins of Electrogenesis in African and South American Weakly Electric Fishes>(リンク)』(PLoS ONE doi:10.1371/journal.pone.0036287)
journal.pone.0036287.g002.jpg
Credit:Sébastien Lavoué.,Masaki Miya., et al., PLoS ONE(doi:10.1371/journal.pone.0036287)
写真は、論文中のFigure 2の引用です。形態の類似したアフリカと南アメリカの電気魚が、比較されています。右列が南アメリカ、左列がアフリカの電気魚だそうです。
 
共に発電器官を有する南米のGymnotiformesの仲間とアフリカのMormyroideaの仲間の共通祖先である硬骨魚の一種は、アフリカと南米が陸続きだった頃には、発電器官を有していなかったと考えられるそうです。
それが、アフリカと南米が分かれた後、それぞれの大陸でほぼ同時期(約1億1千年前)に、電気を感じる器官を獲得し、その後発電器官を発達させるに至ったと考えられるのだとか。

もともと発電器官を持った種が互いの大陸で様々な種に分化したのではなく、大陸が分かれた後にそれぞれ独自に発電器官を得たというのは面白いですね。

因みに、電気器官を持たない生物も神経から筋肉に信号が送られるとき、微弱な電流が発生します。例えば心電図は、臓に流れる微弱な電流を検知してその波形を記録するわけです。

逆に言えば餌となる小魚などを発見するために、この微弱な電流を検知する感覚器官を発達させれば、餌を捉えるのに有利になる訳です。このような電気受容器(ロレンチニ器官)は、サメやエイの他ワニなど一部のの水棲生物に見られます。

電気受容器官には、発電能力はありません。
更に進化して、電気ウナギなどが獲得に至った発電器官は、神経から筋肉に信号が送られる際の微弱な電流を幾つも繋ぎ合わせる事で高電圧の電気を作る事ができる器官です。
このような発電器官を使う事で、仲間同士でコミュニケーションを取る事ができると考えられています。

そして、更にそれを餌を取るための器官として発達させていった・・・。

電気ウナギは、電気柱と呼ばれる発電器官を数十本も体内に持っています。この電気柱、発電板という神経と筋肉繊維の接触部が薄い板状になったものが、数千~数万枚も積層した構造を持っているのです。

このような、電気受容器官、発電器官を離れた場所に住むそれぞれの種が、ほぼ同時期に同様の進化を経て獲得するというのは本当に面白いと思います。



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般若坊

電気うなぎ等が 危険を察知したり、餌を獲ったりするときの放電で 自身が感電しない理由は 何でしょうか? 小さな発電機能をつなぎあわせても 最終的に発生する電圧は 相当高いのですから・・・
水槽に電極をいれて放電させても うなぎは大丈夫なんでしょうか?
この機能が解明されると 大変有用ですね。
by 般若坊 (2012-06-27 23:07) 

optimist

般若坊 さん、こんばんは。
電気ウナギを例にとると、600V以上(最高では800V以上)の高電圧になるそうです。
電気ウナギの内臓は体の前部に集まっていて、分厚い脂肪で覆われているので、自身が感電死することはないのだとか。
電極を水槽に入れて放電しても、この位の電圧なら大丈夫だと思います。
が、全く感電していない訳ではないようで、放電しているときには、電気ウナギ自身も小刻みに震えているそうですよ。
by optimist (2012-06-27 23:25) 

北海道大好き人間

時節柄、デンキウナギを家庭用の発電に用いることができればいいなあと思いました。


by 北海道大好き人間 (2012-06-28 20:14) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
クリスマスシーズンになると、新江の島水族館では、電気ウナギの電気で電飾を光らせるクリスマスツリーが見られますよ♪
by optimist (2012-06-28 21:57) 

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