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カイロウドウケツとドウケツエビ [不思議な生き物・奇天烈生物紹介]

空気清浄機付、防犯システム完備、ついでに食事の支度も不要という住まいがあったら、皆さんどうされますか? そんな夢のような環境に住むエビ、ドウケツエビについてご紹介しようと思います。
偕老同穴0004.JPG
東京海洋大学 水産資料館収蔵のドウケツエビ
 
かれらが住むのは、カイロウドウケツ(偕老同穴)という海綿の仲間の胃腔です。このように他の生物の体内を住み家とする、カクレウオ(ナマコの体内に住む)なども居ます。
ただ、ドウケツエビが特殊なのは、成体となった後、一生をカイロウドウケツの中で過ごす点です。 住処となるカイロウドウケツは、六方海綿の一種で、普通の海綿が持つスポンジ状の海綿質繊維を持っていません。その代わり、ガラスと同じ二酸化ケイ素で出来た網目状の円筒形骨格を持っています。
 
偕老同穴0003.JPG
東京海洋大学 水産資料館収蔵のカイロウドウケツ
 
そして1000mもの深海の海底に固着して、網目状の骨格でできた円筒の内部に広い胃腔を持ち、プランクトンなどの有機物粒子を捕食しているのだそうです。この骨格には開口部はなく、円筒の筒になっています。プランクトンはその網の目を潜り抜けて捕食されるのです。
 
そして、ドウケツエビは、この骨格の中に入り込み、その中で捕食者に襲われることも無く生活するという訳です。
ドウケツエビ科はこれまでに6属34種が知られているそうですが、その中のサンゴヒメエビ属だけが例外的に熱帯の岩礁やサンゴ礁域で自由生活を営み、残りの種は皆カイロウドウケツの胃腔内で、雌雄一対で暮らしているのだとか。
 
普通、エビなどの水棲節足動物の体表面や鰓室内は細菌や寄生性生物、汚れなどが付着するため、例えば脚にブラシ状の剛毛束を持つなど、それを除去する機構が発達しています。 ところがドウケツエビは、宿主の海綿の網目によるフィルターで清浄された環境に暮らすので、これらの掃除機能が退化しているのだそうです。
 
その上、立派な骨格に守られているので、棘なども著しく退化しているのだそうです。
更に、食事についても餌を求めて彷徨う必要はありません。網目のフィルターに詰まった粒子は、彼らの餌となるからです。網目の隙間から手を伸ばし、引っかかった餌を啄む。まさに衣食住揃った快適な生活。
 
一方で、見方を変えると、清浄で安全な環境に身を置く事で、逆に外界で暮らす能力は失ってしまったと見ることもできます。
彼らは、理想郷を手にして悠々自適の生活をしているのでしょうか?はたまた、平穏だが変化の少ない牢獄に閉じ込められているのでしょうか?
 
快適な暮らしを手に入れてきた現代人の姿が彼らとダブるのは、私だけでしょうか?
 
因みにそんな彼らが、どうやって海綿の中に入るのかと言えば、まだ雌雄未分化の状態で網の目を潜って潜り込むのだそうです。
そして2匹の内大きな個体が雄に、小さな個体が雌に分化し、雌雄一対で生活するのだとか。まあ必ず2匹という訳でなく、一生独り身も居れば3個体が住む三角関係というカイロウドウケツも存在するらしいのですが・・・。

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北海道大好き人間

「偕老同穴(~の契り)」は、昔の結婚披露宴では長唄(?)や仲人による新郎新婦の紹介で必ず出てきましたが、それの出典がこれなのですね。
いずれにしても、人間の世界ではその言葉通りの夫婦は減りつつありますが・・・。

by 北海道大好き人間 (2012-11-14 20:00) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
最近では披露宴を開かない人も増えているようですし、偕老同穴の契りなんて聞いた事も多くなったでしょうね。
by optimist (2012-11-22 22:44) 

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