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刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggerd Acquisition of Pluripotency)細胞 [科学系よもやま話<新薬・新技術>]

本日とりあげるのは、トップニュースとしてメディアでも取り上げられているこのニュースです。

イギリス英国の科学雑誌Natureに掲載された、理化学研究所の小保方晴子さんらによる研究成果は、STAP細胞(Stimulus-Triggerd Acquisition of Pluripotency:刺激惹起性多能性獲得)という万能細胞に関するものです。
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency(リンク)』(doi:10.1038/nature12968 )

リンパ球を酸性の溶液に晒すと多能性幹細胞が誘導されるという内容で、万能細胞として有名なiPS細胞をつくるよりもはるかに簡便なやり方で万能細胞を作る事ができるそうです。
詳細は、独立行政法人理化学研究所のプレスリリースをご覧ください。
細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見(リンク)』
今回の発見、何がそんなに素晴らしいのでしょう?

そもそも、私たち哺乳類動物の体は、様々な細胞(体細胞)で構成されています。それは、たった1つの細胞(受精卵)が分裂を繰り返す事で作られる事が知られています。分裂を繰り返して様々な細胞、例えば血液細胞や筋肉細胞といった特定の細胞になることを、『分化』と言います。

植物では、分化した細胞から未分化な状態に戻す事ができます。しかし、動物細胞では、環境(細胞外環境)を変えるだけで一度分化してしまった細胞を未分化の細胞に戻るす事(初期化)は、起こらないと考えられていました。

最近、注目をあびているiPS細胞は、未分化にさせるためのタンパク質を作る遺伝子を細胞に導入する事で作られた、未分化状態、つまり分化多能性を持った細胞(万能細胞)です。従来不可能と思われていた事を可能にしたので評価されていました。

では、今回のSTAP細胞はどうでしょう。この技術も分化した細胞を初期化するものですが、その方法は遺伝子操作などを必要としません。とっても単純に言えば、pH5.7の弱い酸に30分ほど細胞を曝すだけで、万能細胞にする事ができちゃったんだそうです。
これは、従来の細胞学ではありえない結果です。で、今回、これほど称賛されているんですね。

なんでも昨年春、Natureに投稿した際は、査読者に「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄していると酷評され、掲載を却下された」んだとか^^;
確かにこれまでの常識から逸脱していますし、個人的にも俄かに信じがたい内容です。ですが、それだけ従来概念から一脱した、とんでもない成果だとも言えますね。

ところで最初の実験はマウスのリンパ球を使ったものでしたが、脳、皮膚、骨格筋、脂肪組織、骨髄、肺、肝臓、心筋などの組織の細胞をリンパ球と同様に酸性溶液で処理したところ、程度の差はあれ、いずれの組織の細胞も初期化が可能だったそうです。

また、酸性溶液処理以外の強い刺激でもSTAPによる初期化が起こる事も併せて報告しています。細いガラス管の中に細胞を多数回通すなどの物理的な刺激、細胞膜に穴をあけるストレプトリシンOという細胞毒素で処理する化学的な刺激など、強くしすぎると細胞を死滅させてしまうような刺激を少しだけ弱めて細胞に加えることで、STAPによる初期化を引き起こすことができるとされています。

どれも、今まで不可能と言われていた事例であり、STAPが特殊な場合にのみ起きる現象ではない事が伺えます。マウスの年齢が高くなると初期化が起きにくくなるのは何故か?マウス以外の細胞ではどうなのか?など、課題はあるわけですが、今後の研究成果に期待ですね♪





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北海道大好き人間

ひょっとして、そう遠くないうちにノーベル賞を受賞するのではないかと思います。
分野的にはやはり医学・生理学賞でしょうか?

by 北海道大好き人間 (2014-01-31 13:24) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
そうなると良いですね。
小保方さんに限らず、日本人受賞者が沢山でる未来を期待しましょう。
by optimist (2014-02-01 22:42) 

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