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ゾウの「代理母」を使ったマンモス復活計画、近畿大 [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日ご紹介するのは、近畿大学生物理工学部の入谷明教授らによるマンモスのクローニングに関するニュースです。

実は、絶滅種のクローンに関するニュースは、最近頻繁に目にします。今回ニュースになった近畿大学 生物理工学部によるマンモス再生の他にも、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの『ゲノム・リプログラミング研究チーム(リンク)』ではニホンオオカミのクローン再生が研究されています。また、海外に目を向けると、ピレネーアイベックス(ブカルド)やフクロオオカミ(タスマニアタイガー)のような絶滅種のクローン再生研究などがあります。

他にも、近畿大学 生物理工学部では奄美大島の絶滅危惧種、アマミノクロウサギのクローンが研究されているし、大型のウシの仲間で絶滅危惧種のガウルのクローン『ノア』が生まれたのは、既に10年も前の話。このようなクローニング研究がされている絶滅危惧種は、ボンゴ、ジャイアントパンダ、オセロット、チーターなどが挙げられます。

まさにクローン研究花盛り。

最初のクローン羊、ドリーが1996年に生まれて以降、クローン技術は、日進月歩で発展しているんですね。
クローン技術を用いた絶滅種再生については、映画にもなったマイケル・クライトンの小説『ジュラシック・パーク 』(Jurassic Park)で、一気に一般の人々に認知されたように思います。
 

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クローンとは? [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日からは、先日の『ゾウの「代理母」を使ったマンモス復活計画、近畿大』で、お約束した通り、クローン技術の現状を私なりにまとめてみようと思います。
あくまで素人目線での話となる点は、ご容赦下さい。

そもそもクローンとはなんでしょう?
本来クローン(Clone)とは、挿し木を意味します。挿し木で増えた植物って、元の木と増えた木は、全く同一の遺伝子型なんです。

生物学用語としては、1903年にウェッバー(H. J. Webber)が最初に使い、 栄養生殖によって増殖した個体集団として定義されます。ようは、同一の遺伝子型をもった個体群です。
今では、細胞や遺伝子についても用いられます。例えば、DNAのクローニングという使い方です。DNAのクローニングは、染色体中や細胞質中から特定のDNA断片をベクターに組み込み、宿主細胞(大腸菌など)へ導入することで、特定のDNAだけを大量に増やす事を意味します。

そして、最近よく耳にするクローンが体細胞クローンです。単にクローン羊やクローン牛、クローンマウスと表記されますが、厳密には体細胞クローン。これは、成長した個体の体から遺伝情報を得て、別の卵子に移植することで生まれます。
体細胞クローンは、自然界では存在しないクローンです。
 
ところで、自然界でと書きましたが、実は自然界でクローンは結構ありふれた存在なのをご存知でしょうか?
 

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タグ:クローン
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人為的なクローン [科学系よもやま話<クローンの話>]

前回、クローンとは、遺伝子型が同じ個体群だというお話をしました。

既にご紹介したように、自然界でクローンは、珍しい存在ではありません。
でも、クローン技術と聞くと、抵抗を感じる人が存在するのも確かです。同一遺伝子を持つ存在が複数個体いるという状態は、自然に起こる事なのですから、抵抗を感じるのは、その過程にあると考えられるのでは無いでしょうか?

つまり、人間が介在するクローンだから抵抗があるという考えです。
これが正しいかは分かりませんが、人間の関わり方によって、感じる抵抗もかなり変わると思います。

それでは、幾つか例を挙げますので、それぞれの基準で、考えてみて下さい。
※ちょっと長いですが、ご容赦下さい。 

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タグ:クローン
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人為的なクローンについての考察 [科学系よもやま話<クローンの話>]

前回、人間の手が介在するクローンについて8つの例を挙げました。
皆さん、どう感じたでしょうか?
基本的に下の例に行くほど、抵抗を感じる人が多いと思われる順にしたつもりです。

どの例も、人為的にクローン生物を生み出しているという点は同じです。このように多数の例を挙げたのは、クローンに抵抗を感じるという人(或いは感じない人)が、どこに判断基準を持っているかを把握しやすいと思ったからです。

それでは、予告通り、昨日示した例を使って、クローンに対する印象について考察してみましょう。ただ、例5以降での考察については、話が長くなりそうなので割愛します
(つまり、既に死亡している個体の再生の是非、異種の代理母を使う事の是非、その複合、更には失われた種のクローニングの是非という部分です)。読まれている皆様が個別に考えて頂ければと思います。

また、クローンにする対象が人間になっちゃうと、かなり議論が錯綜しそうなので、あくまで動植物限定で話を進めます。

1)挿し木・・・ソメイヨシノのクローン
2)個体の切断・・・プラナリアのクローン
3)受精卵の切断・・・初期胚を切断して戻す事による人為的双子
4)体細胞クローンドリー。或いは、クローン牛(夢福 -I,夢福 -II)
5)マウスの凍結死骸からのクローニング
6)絶滅危惧種ガウルのクローン、ノア
7)絶滅種ブカルド(別名:ピレネーアイベックス)のクローン
8)マンモスのクローン
※お手数ですが、各例については、昨日の記事をご覧下さい。ここでは、簡単にタイトルだけ記載します。

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絶滅(危惧)種のクローニングの可能性と懸念点 [科学系よもやま話<クローンの話>]

こうのとり2号機のン22時15分からのISSとのドッキング中継、皆さんご覧になりましたか?
先ほど、無事ドッキング(ボルトの固定などはまだこれからですが)となりましたね。おめでとうございます♪

前振りとは全く関係ありませんが、今日もクローン技術についての話です。
体細胞クローンを含むクローン技術は、現在では既に実用化され、知らず知らずにその恩恵を受けています。

これに対して、絶滅(危惧)種のクローニングという技術は、大きな可能性がある一方で、懸念点も指摘されています。今回は、クローンや生命工学に対する批判とは切り離して、これらについてご紹介しようと思います。

【絶滅種のクローニング】
一番最初に思いつくメリットは、生物多様性が失われても再生できるかもしれないという事です。しかし、これには大きな誤解があります。単に1個の個体を再生する事は出来ますが、種を再生させるには一定の数(遺伝子の多様性)が必要だからです。

例えば、ある動物の細胞を保管したとして、そのクローンを増やしたとしても、全て同じ遺伝子型ですから、遺伝子で見たら、全く多様性はありません。例えば、食用にするとか、観賞用にするとか、或いは医薬品を作る材料とするなどの用途で行うなら、極端な話1個体の遺伝情報さえあれば(特に雌なら)クローニングは可能です。雄の個体だけだと出産をいつまでも別種に依存する事になるので、雌雄一対が最小単位でしょうか。

しかし、こうして復活させた彼らは、全て同じ遺伝情報しか持っていませんから、自然に繁殖して種として安定する可能性は、非常に低いのです。

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絶滅危惧種からのiPS細胞作成に成功 [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日取り上げるのは、絶滅の危機にある動物からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作ったという報告についてのニュースです。
論文は、9月4日付けの米科学誌「Nature Methods(ネイチャー・メソッズ)」に掲載されています。
Induced pluripotent stem cells from highly endangered species(リンク)』

以前、クローニングによる絶滅動物や絶滅危惧種の再生というテーマについてご紹介した事があります。
科学系よもやま話<クローンの話>

このニュースになっている技術は、クローンではなく、絶滅危惧種のiPS細胞を作ったという物です。但し、この技術で絶滅の危機にある種が救えるかについて、私個人としては、懐疑的な意見です。絶滅動物の細胞から精子と卵子を作るなどのテーマもクローニングと同様の問題を孕んでいると思います。
この辺りについては、以前の記事でも書いていますので、良かったらご覧下さい。

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理研、クローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発 [科学系よもやま話<クローンの話>]

2011年11月8日、理化学研究所が、伝子改変なしにクローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発したと発表しました。
遺伝子改変なしにクローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発(pdfファイル)』

RNA干渉法と呼ばれる手法を利用して、塩基配列を変えることなく、体細胞クローンマウスの出生率を10倍以上改善する技術の開発に成功したそうです。

体細胞クローン技術を利用すれば、全く同じ遺伝情報を持つ「コピー」動物を無限に生産する事ができます。かし、体細胞クローン動物は、出生率が低いという問題がありました。移植した胚の数%しか産まれないのです。
ところが、この技術を使えば、クローン胚の発生能力が大きく改善し、通常の10倍(移植胚あたり12~20%)の効率でクローン産子を作ることに成功したそうです。加えて、通常のクローン産子で見られる遺伝子発現の乱れも大幅に改善されたのだとか。

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「キメラ」アカゲサルが誕生!? [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日ご紹介するのは、アメリカ ONPRC(Oregon National Primate Research Center:オレゴン国立霊長類研究センターの立花真仁研究員らが、世界で初めてキメラ」のアカゲザルを作ることに成功したというニュースです。
この研究成果は、アメリカの科学誌Cell(電子版)に掲載されています。
Generation of Chimeric Rhesus Monkeys(リンク)』

4細胞期の胚を3~6個を混ぜて凝集させて、5匹のサルの子宮に戻したところ、内2匹から双子を含む計3匹のオスの子ザルが生まれたのだそうです。その内の1匹は、6個の胚からなる(つまり1つの個体に6体分の遺伝情報を有する)ことからロクと名づけられたのだとか。残る2匹は、「ヘックス」と「キメロ」。

ところで、遺伝子工学におけるキメラって何だかご存知ですか?
多分、多くの方がキメラ胚、クローン胚、ハイブリッド胚等の違いをご存じないのではないかと思います。でも日本では、広く一般にその倫理的問題などが議論される事もないまま、実はその成果を享受しているんですよ。

まず、ある個体と同一の遺伝情報を持つ個体をクローンと呼びます。クローンの細胞は全て同じ遺伝情報を持っています。
これに対し、一般にキメラとは、異なる複数の生物体の細胞を含む固体を指します。今回のアカゲザルの場合、本来なら兄弟になるはずの胚を混ぜて凝集させ、これを子宮に戻して成長させたので、ロクは1固体なのに6種類の遺伝情報を持つ細胞を持っています。
また、ハイブリッドは、二つの異なる種の間での異種交配の結果生み出されたものです。オスライオンとメストラのハイブリッドであるライガーや、オス豹とメスライオンのハイブリッドであるレオポンという名前を聞いたことがある方はいらっしゃるかもしれませんね。ハイブリットさせる方法は、人工交配であったり、人工授精であったり様々です。

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タグ:遺伝子工学
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