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シャボン玉の色の話#1(色と光の話 第17回) [科学系よもやま話<色と光の話>]

先日、色水を使ったシャボン玉で色が見えない(十分濃ければ見えるけど)という話をご紹介しました(『宇宙シャボン玉は「色つき」 娘の疑問に山崎さん答えた』)。その理由は、シャボン玉の膜厚が数ミクロン以下と薄いからというお話をしましたが、シャボン玉が七色に見えるのは何故でしょう?

この辺りの説明として、今日は、もう少し詳しくシャボン玉についてお話してみたいと思います。

まずは、シャボン玉の構造を理解しないと話が始まりません。シャボン玉は、薄い水の膜で出来ています。水だけだと表面張力で小さな液滴になりますが、シャボン玉には
、石けんや洗剤の成分『界面活性剤』が含まれています。この『界面活性剤』のおかげで薄い膜のまま維持する事ができるんです。

界面活性剤は、単純に書くと、水となじみ易い親水基と油になじみ易い親油基を持っています。丁度マッチ棒のような感じです。
界面活性剤.jpg
この界面活性剤で水をサンドイッチした状態がシャボン玉です。親水基が水の方を向いて、反対側の親油基が空気側を向いた状態で、綺麗に整列しています。

この時の膜厚は数μm以下なのですが、時間が経つと水は徐々に蒸発したり、重力で下のほうに移動するため、薄くなった部分から壊れてしまいます。色水で作ったシャボン玉が無色に見えるのも、シャボン玉が七色に輝いて見えるのも、この膜の厚みによるものです。

色水の場合は、先日お話したように、あまりに膜が薄くて認識できないだけで、非常に薄い色が着いています。ですから、十分に濃い色水で作ったシャボン玉は色つきです。また、膜が厚い程色がはっきり見えます。宇宙で色つきシャボン玉が作れたのは、十分厚膜が作れたからという訳です。地上では、厚くしようとしても、重力で球の底面に垂れてしまい、十分な厚さを維持できないのですが、無重力なら関係ないってわけです。

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シャボン玉の色の話#2(色と光の話 第18回) [科学系よもやま話<色と光の話>]

前回、シャボン玉の七色が干渉色によるものだというお話をしました。

そこで、今回は干渉色について理論的な説明を少しお話したいと思います。シャボン玉の表面に光が反射する時に、図の様に、膜の表面で反射する光と、膜の内側で反射する2つの経路が考えられます。
反射.jpg
この2つの経路で重ね合わせた波が打ち消しあう場合は、光が弱くなり、強め合う場合は強くなります。この強めあう波長の色が干渉色です。

どの波長が強めあうのかを考えるのに説明しなければならないものが3つあります。
一つが行路差、、二つ目が位相、三つ目が屈折率です。

行路差は、膜の内外それぞれで反射する光の経路の長さです。つまり、B→D→EとA→C→D→Eの距離の差です。単純に考えれば、この差が波長の長さと一致していればその波長の光は強められる筈ですね。

しかし、そう単純な話ではありません。詳しい説明は省きますが、B→D→Eの経路をとって膜の表面で反射する光は、固定端反射となり位相がπずれます。これに対して、A→C→D→Eの経路をとって膜の内側で反射する光は自由端反射となり位相はずれません。
位相とは、ひとつの周期中の位置の事です。位相がπずれるとは、山と谷がちょうど反転した波形になる事を指します。即ち、表面で反射した波と内側で反射した波は、波長の半分の長さだけずれる事になります。
よって、行路差に波長の半分を加える必要があるんです。

更に、これだででは、まだ足りません。屈折率が大きいという事は、その媒質の中での波の速さが遅い。つまり波長も短くなるんです。空気からシャボン玉の膜に光が進む時の相対屈折率をasとすると、波長が短くなる分、実際の行路差としては、波長が短くなる分を考慮してas×行路差とする必要があります。

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光と色の話 [科学系よもやま話<色と光の話>]

前々回、前回とシャボン玉の色の話をした際に、サブタイトルに『色と光の話』とつけました。

実は、このブログを始める前、楽観主義者の鉱物図鑑で、一時『色と光の話』を載せた事がありました。シャボン玉の話もその続きという感じかな~とサブタイトルを同じにしてみました。

そこで、改めて、色と光の話についてまとめてリンク先を載せてみました。サイドバーにも『光と色の話』のバナーを作りましたので、お暇な時にでもご覧頂ければ幸いです。

光と色の話
第1回『光ってなんだろう?』
第2回『光の特徴
第3回『目はどうやって光を捉えるのか?』
第4回『色って何?
第5回『光の三原色
第6回『色の三原色
第7回『カラーチェンジについて
第8回『鉱物の色の原因
第9回『自分で光る鉱物
第10回『ルミネッセンスの話
第11回『自発光と言えば・・・
第12回『カラーセンターによる発色
第13回『人の感じる色と他の生き物の感じている色
第14回『蛍の光は、文字通り蛍光の一種
第15回『りん光って何?
第16回『黄ばんだ洗濯物が真っ白になる理由
第17回『シャボン玉の色の話#1
第18回『シャボン玉の色の話#2

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サーモクロミック分子① [科学系よもやま話<色と光の話>]

サーモクロミズムを発現するサーモクロミック分子として有名なのが、ジエチルジエチレングリコール銅(Ⅱ)錯体です。
組成式[Cu(dieten)2](X)2で表されるこの分子、陰イオンのXがテトラフルオロホウ酸(BF4)イオンの場合は、23℃を境に、過塩素酸(ClO4)イオンの場合は、43℃を境に低温では赤紫色、高温度では濃紫色に可逆的な色変化(サーモクロミズム)を起こすんです。

Diethylethylenediamine+Cu.pngこれは、過塩素酸塩での低温相と高温相の両相の構造解析結果を示した模式図です。

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サーモクロミック分子② [科学系よもやま話<色と光の話>]

前回は、サーモクロミズムの中でも分子構造の変化に伴うものを、ジエチルジエチレングリコール銅(Ⅱ)錯体を例に、ご紹介しました。
今回は、コレステリック液晶のサーモクロミズムについてご紹介します。

そもそも液晶は、読んで字の如く、液体の流動性と結晶の異方性を合わせ持つことから、液+晶=液晶なんです。
簡単に言えば、分子が整然と秩序だって並んだ結晶の特徴と、これが自由に動く液体の特徴を合せ持っています。

まあ、最近は、液晶=液晶ディスプレイみないな使われ方もしますが、液晶自体はディスプレイ以外にも多くの分野で使われている材料です。

そんな液晶の中でも、コレステリック液晶は、分子配列がらせん構造を示します。そして、らせんの周期に対応した構造色を呈します。液晶によっては温度によって、この螺旋周期が変化するので、温度によって色が変化するという訳です。

なんて説明しながら、「不斉炭素って何?」「分子配列がらせん構造になるの?」とか、「らせん周期によって色がつくのはなんで?」とか、疑問が浮かぶ人も多そうだな~と思ったりもします。
が、これを簡潔に説明する能力が私にはありません。ごめんなさい。そんな疑問を持たれた方は、是非ご自身で調べてみて下さい。

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サーモクロミック分子③ [科学系よもやま話<色と光の話>]

さて、今回はサーモクロミズムを使った大ヒット商品、フリクションインキについて、その原理を解説しようと思います。

フリクションインキは、ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を一つのマイクロカプセルの中に均一に混合し、封入して顔料化したものです。

ロイコ染料とは、黒、赤などの色を決める成分です。ちょと難しく言えば、酸化還元に伴って可逆的に色調が変化する有機色素となります。
ロイコ染料.png
そして、酸化還元を行うのが顕色剤です。よくあるのは、還元状態で無色な分子が、顕色剤で酸化されると発色するというものです。感熱紙にも使われていますが、あくまで酸化還元で可逆的に色が変化するので、温度によって酸化或いは還元が起こるようにした場合に、サーモクロミズムを発現します。

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