SSブログ

ES細胞から人工網膜組織の3次元形成に世界で初めて成功 [科学系よもやま話<新薬・新技術>]

今日ご紹介するのは、独立行政法人 理化学研究所のプレスリリースです。
ES細胞から人工網膜組織の3次元形成に世界で初めて成功(pdfファイル)』

この発表は、眼組織のもとと言える眼杯(胎児型の網膜組織)を、試験管内でマウスのES細胞から立体形成させることに、世界で初めて成功したというものです。
更に、この眼杯を2週間程度培養を続けることで、生後マウスの網膜に近い神経網膜組織の立体形成にも成功したそうです。この組織は、神経網膜の主要細胞をすべて含むだけでなく、3次元的に秩序だった多層構造を有し、神経細胞間のシナプスを形成していることも確認したとありました。

理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 器官発生研究グループの笹井芳樹グループディレクターと立体組織形成・解析ユニットの永楽元次副ユニットリーダーを中心とした研究グループの成果だそうです。

論文は、英国の科学誌『Nature(Vol.472,P51-56(07 April 2011))』に掲載されています。
Self-organizing optic-cup morphogenesis in three-dimensional culture(リンク)』
※Full Textは有料です。

哺乳類の眼、特に網膜はいったん障害を受けると、自然に再生しません。そのため網膜変性症などの網膜の機能が失われる事によって視力を失うと、自然治癒することはないのです。
ただ、薄い1層の細胞シートである色素上皮は、従来技術で、ES細胞・iPS細胞から再生され、加齢黄斑変性の治療方法として臨床研究が行われています。一方、視細胞などを含む神経網膜は多種類の細胞を含む多層構造を持ち、複雑な組織であるため、従来は再生させる事が不可能だったそうです。

それが、今回初めて成功したという事で、網膜再生にまた一歩近づいたというわけです。

ところで、全く異なるアプローチとして、人工網膜などの視覚神経への電気刺激によって視覚を再建する工学システムの開発も行われています。人工眼と呼ばれる技術です(一番最後のリンク記事をご覧下さい)。

これらの技術により、視力を失った人が、再び視力を取り戻せる世の中が来ることを期待します。





nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 2

北海道大好き人間

こういう症状に悩む患者さんにとって、文字通り「光」となってくれればいいと思います。

by 北海道大好き人間 (2011-04-10 08:33) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
本当に、再生医療なども含め、早く患者さんを救える日が来て欲しいものです。
by optimist (2011-04-20 22:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。