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九州や東北出身者はお酒に強い?(アルコール代謝の話#5) [科学系よもやま話]
長々続けてきたアルコール代謝の話も、今回で最後です。これまでにお酒に強いか弱いかは、分解酵素であるADH2やALDH2の型によるという事をご紹介してきました。
このADH2やALDH2の遺伝子多型は人種によってその出現率が異なる事が知られています。
ALDH2にみられるAG型やAA型は、モンゴロイド(黄色人種)に見られる変異で、コーカソイド(白人種)・ネグロイド(黒人種)・オーストラロイド(オーストラリア原住民など)は基本的にGG型である事が知られています。筑波大学の原田勝二教授によると、ALDH2のA型への変異は2~3万年前にモンゴロイド人種の中で起こったと考えられるそうです。これらの人々が移動していった先でAG型やAA型の人がみられると考えているんだとか。遺伝学的に人種の移動が見えてくるってわけですね。
因みにコーカソイド(白人種)のADH2は、実に8割から9割がArg/Arg型です。つまりADH活性が弱くアルコールの分解に時間がかかるので、長く酔った状態が楽しめます。そして、前述の通りALDH2はGlu/Glu(GG型)でALDH活性が強いので、毒性の強い分解生成物であるアセトアルデヒドの悪影響が少ないという事が遺伝的に言えます。
対して、日本人の場合ADH2の遺伝子多型は、His/Hisが60%、Arg/Hisが35%、Arg/Argが5%だそうです。そして、ALDH2はGG(Glu/Glu)型が55%、AG(Lys/Glu)型が40%、AA(Lys/Lys)型が5%。大多数がアルコールの分解が速いため、気分良い時間が持続しない上に、半数近くはアセトアルデヒドの分解速度が追いつかず、気分が悪くなるという悲しい結果に・・・。
又、このようなアルコール分解能力は、都道府県で見ても大きな差が見られるんだそうです。
面白い事に、全都道府県5255人を対象にしたALDH2の変異を調査した所、近畿ではGG型が少なく、東北や九州でGG型が多いという結果が得られたそうです。丁度近畿を中心に同心円状になっています。つまり、GG型が75%未満なのが、中部・北陸・近畿・中国地方。特に愛知や三重では40%程度しか占めていません。そして、75%~80%なのが関東、四国、九州北部。80%以上なのが北海道、北陸、南九州、沖縄という感じ。
これは、自然選択説のような話ではありません。つまり、中部・近畿地方は酒が飲めなくても不利にならないが、酒を飲むイメージがある沖縄、鹿児島、あるいは東北では下戸は生存に不利・・・な~んて話じゃないんです。
おそらく縄文人と呼ばれるポリネシア系海洋民族が住んでいた日本に、近畿地方を中心に大陸蒙古系民族が進出し、同心円状に混血が進んだ結果ではないでしょうか。この大陸蒙古系民族のALDH2が、A型への変異したので、中日本はGG型が少ないのに、北海道や沖縄・鹿児島でGG型が多いって事なんだと思います。
余談ですが、このような分布は、他にも見られます。『全国アホバカ分布考』という本をご存知でしょうか?関東で『バカ』関西では『アホ』と言いますが何処に境があるか?という話から、全国ではどう分布しているのかを『探偵ナイトスクープ』という番組調べた結果を元に、ディレクターの松本修氏が書いた本です。
この本でも、近畿地方を中心とした同心円で方言が似ているのが紹介されています。面白い本なので、未だ読んでいらっしゃらない方にはお勧めの一冊です。いつか、内容についてもう少し詳しくご紹介したいと思います。
最後は、なんだかお酒から随分かけ離れてしまいました・・・。
では、皆様これからの宴会シーズン、くれぐれもお体に気をつけて下さいね~。
最後になりましたが、一連の『アルコール代謝の話』を書くにあたり、参考にした文献(サイト)の一覧を記載しておきます。
参考資料:
『文部科学省特定領域研究 ゲノム研究のホームページ』
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)』
『酒の強さは遺伝子で決まる』(アットホーム こだわりアカデミー)
キリンビールの『知る・楽しむお酒と健康』から『日本人の約半分はお酒に弱い!?』
『遺伝子が教えるアルコール依存症のリスク(J. I. ナーンバーガー/L. J. ビエルト,日経サイエンス2007年7月号)』
『アルコール脱水素酵素2の遺伝子の個人差によって男性の脳梗塞の危険性は2倍にはねあがる』(日本医科大学 大学院 医学研究科)
このADH2やALDH2の遺伝子多型は人種によってその出現率が異なる事が知られています。
ALDH2にみられるAG型やAA型は、モンゴロイド(黄色人種)に見られる変異で、コーカソイド(白人種)・ネグロイド(黒人種)・オーストラロイド(オーストラリア原住民など)は基本的にGG型である事が知られています。筑波大学の原田勝二教授によると、ALDH2のA型への変異は2~3万年前にモンゴロイド人種の中で起こったと考えられるそうです。これらの人々が移動していった先でAG型やAA型の人がみられると考えているんだとか。遺伝学的に人種の移動が見えてくるってわけですね。
因みにコーカソイド(白人種)のADH2は、実に8割から9割がArg/Arg型です。つまりADH活性が弱くアルコールの分解に時間がかかるので、長く酔った状態が楽しめます。そして、前述の通りALDH2はGlu/Glu(GG型)でALDH活性が強いので、毒性の強い分解生成物であるアセトアルデヒドの悪影響が少ないという事が遺伝的に言えます。
対して、日本人の場合ADH2の遺伝子多型は、His/Hisが60%、Arg/Hisが35%、Arg/Argが5%だそうです。そして、ALDH2はGG(Glu/Glu)型が55%、AG(Lys/Glu)型が40%、AA(Lys/Lys)型が5%。大多数がアルコールの分解が速いため、気分良い時間が持続しない上に、半数近くはアセトアルデヒドの分解速度が追いつかず、気分が悪くなるという悲しい結果に・・・。
又、このようなアルコール分解能力は、都道府県で見ても大きな差が見られるんだそうです。
面白い事に、全都道府県5255人を対象にしたALDH2の変異を調査した所、近畿ではGG型が少なく、東北や九州でGG型が多いという結果が得られたそうです。丁度近畿を中心に同心円状になっています。つまり、GG型が75%未満なのが、中部・北陸・近畿・中国地方。特に愛知や三重では40%程度しか占めていません。そして、75%~80%なのが関東、四国、九州北部。80%以上なのが北海道、北陸、南九州、沖縄という感じ。
これは、自然選択説のような話ではありません。つまり、中部・近畿地方は酒が飲めなくても不利にならないが、酒を飲むイメージがある沖縄、鹿児島、あるいは東北では下戸は生存に不利・・・な~んて話じゃないんです。
おそらく縄文人と呼ばれるポリネシア系海洋民族が住んでいた日本に、近畿地方を中心に大陸蒙古系民族が進出し、同心円状に混血が進んだ結果ではないでしょうか。この大陸蒙古系民族のALDH2が、A型への変異したので、中日本はGG型が少ないのに、北海道や沖縄・鹿児島でGG型が多いって事なんだと思います。
余談ですが、このような分布は、他にも見られます。『全国アホバカ分布考』という本をご存知でしょうか?関東で『バカ』関西では『アホ』と言いますが何処に境があるか?という話から、全国ではどう分布しているのかを『探偵ナイトスクープ』という番組調べた結果を元に、ディレクターの松本修氏が書いた本です。
この本でも、近畿地方を中心とした同心円で方言が似ているのが紹介されています。面白い本なので、未だ読んでいらっしゃらない方にはお勧めの一冊です。いつか、内容についてもう少し詳しくご紹介したいと思います。
最後は、なんだかお酒から随分かけ離れてしまいました・・・。
では、皆様これからの宴会シーズン、くれぐれもお体に気をつけて下さいね~。
最後になりましたが、一連の『アルコール代謝の話』を書くにあたり、参考にした文献(サイト)の一覧を記載しておきます。
参考資料:
『文部科学省特定領域研究 ゲノム研究のホームページ』
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)』
『酒の強さは遺伝子で決まる』(アットホーム こだわりアカデミー)
キリンビールの『知る・楽しむお酒と健康』から『日本人の約半分はお酒に弱い!?』
『遺伝子が教えるアルコール依存症のリスク(J. I. ナーンバーガー/L. J. ビエルト,日経サイエンス2007年7月号)』
『アルコール脱水素酵素2の遺伝子の個人差によって男性の脳梗塞の危険性は2倍にはねあがる』(日本医科大学 大学院 医学研究科)
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タグ:アルコール代謝の話
私も九州北部出身ですが、お酒はそれほど強くありません><
飲んだらすぐ寝てしまう、手のかからない(?)酒飲みです(^-^;
『全国アホバカ分布考』、なかなか面白そうな本ですね。
いつかぜひ読んでみたい。
民族移動とか、言語(方言)の分布とかかなり興味あります^^
by Loby (2010-03-30 22:42)
Loby さん、こんばんは。
『全国アホバカ分布考』、学者の書いたものではありませんが、その考察もなかなか面白く、たかがバラエティー番組だろ?なんて感じではありません。
是非、機会があったら読んでみてください。
by optimist (2010-03-31 22:30)
>酒を飲むイメージがある沖縄、鹿児島、あるいは東北では下戸は生存に不利
沖縄には泡盛が、鹿児島には芋焼酎という高アルコールの飲み物がありますし、東北は寒い分、酒で「暖をとる」ということも考えられないでしょうか?
by 北海道大好き人間 (2010-06-14 22:33)
ポリネシア系が一番強い三重愛知が酒に一番弱いんだよ
矛盾してるよ
by kfe (2019-04-14 07:50)