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鯨骨生物群集 [不思議な生き物・奇天烈生物紹介]

閉鎖的な環境で生態系を作っている生物群として、以前ご紹介した、地中海L'Atalante湾の海底堆積物中で発見された、酸素無しで活動できる多細胞生物群や、深海の熱水噴出孔にみられる熱水噴出孔生物群が挙げられます。

しかし、深海では他にもかなり閉鎖的な環境で生態系を作っている生物群が存在する事が知られています。それが、鯨骨生物群集です。大型の海洋性哺乳類は脂肪組織を多く含むため、それが分解する過程でメタンや硫化水素といった化学合成の基質となる多くの物質が発生します。そのため周辺に嫌気性の化学合成細菌を生産者とした独自の生態系が形成されるという訳です。

不思議な事に群集を構成する生物の多くは移動能力が低いか、あるいは固着性で移動しません。つまり、大きなクジラの死体に依存した生態系は、クジラの骨が分解されるまでの間存在する、準閉鎖的な生態系と言えます。クジラを使い尽くすと、それ以上存在出来ませんが、群集を構成していた生物は幼生の状態で移動し、次なる死体にありつくのでしょう。なにせ、成体は移動能力に乏しいため、偶然すぐ近くに次のクジラが降って来るなんて僥倖を期待するのには無理がありますからね^^;

鯨骨生物群の中で有名なのは、鯨骨を住処にするホネクイハナムシ。別名のゾンビワームの方が知られた名前かもしれません。2006年に記載された環形動物多毛類なのですが、同属の多毛類は全て鯨骨から見つかっています。系統的には熱水噴出孔に群生するハオリムシと同じSiboglinidae 科に属するそうですが、別種です。
JAMSTEC20130001.JPG
※写真は、JAMSTECの一般公開で展示されていたホネクイハナムシ

実際に、色々と研究されていて、クジラのサイズや、死体が沈降した環境(水深や水温等)でも生態系が維持される期間に大きな差が見られるようです。

生命って、想像以上にどんな環境であっても、適応した物が存在するものですね。
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北海道大好き人間

深海の海底は、太陽光線は全く届かず、水圧もものすごいですから、未発見の新生物がいる可能性もありますね。

by 北海道大好き人間 (2011-08-04 19:59) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
深海は殆ど未知の世界と言って差し支えないような世界ですよね。
多惑星にすら探査機が行く時代でも、ほんの10km下の海底に行くことのなんと困難な事か・・・。
by optimist (2011-08-08 21:34) 

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