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種無しブドウと植物ホルモン [科学系よもやま話]

種無しブドウと言えば、デラウェアが有名ですね。この種無しを作るのも、先日ご紹介した植物ホルモン、ジベレリン酸(ジベレリンA3)です。
(+)-ジベレリン酸.jpg
ジベレリン酸は、細胞の成長と伸長を促進する事が知られています。
デラウェアを種無しにしたのも、最初から狙っていた訳では無いそうです。デラウェアは粒が密生するので、つぶれないように実を間引いていたのですが、この手間をはぶくため、房軸を長くしようと研究されたのが最初だそうです。
ところが、房軸を長くしようと思ったジベレリン酸処理の結果、偶然、種がないデラウェアができる事が分かったそうです。

ただ、種は無くなったものの、実が大きくならないという問題も・・・。ところが、ジベレリン処理を2回繰り返すことで粒も大きくなり熟すのも早くなることが分かり、一気に実用化したそうです。
開花前のデラウェアの房を一房ずつジベレリン水溶液に浸け、開花後にもう一度、ジベレリン水溶液に浸ける。これで種なしデラウェアができる。しかも、ジベレリン処理をしたほうが、大粒になるんだそうです。

一房ずつカップに浸けるという手間をかけてこその、種無しなんですね。

ところで、ジベレリンに対する感受性は、品種によって異なるそう。デラウエアは、種無し化されやすい品種だったのですが、巨峰やピオーネなどの大粒系ブドウ品種はジベレリンに対する感受性が高いため、穂軸が極度に湾曲・硬化したり、脱粒してしまうという問題があり、当初種無しが出来なかったんだとか。
確かに、種無しと言えば、デラウェアでしたよね。

でも、最近は巨峰やピオーネなど、多くの品種で種無しが出回っています。これは、花穂の先端部分3~4cmだけの蕾を残し、それより上の蕾を軸ごと落とすという、特別な房作りにより脱粒を押さえる技術が確立されたからだそう。
この手法のおかげで、巨峰を含めた4倍体品種でも種無し品が出回るようになったんだとか。

また、甲州なども、ジベレリンによる種無し化が、困難な品種として報告されていましたが、ジベレリンA3の高濃度溶液に合成サイトカイニンの6-(ベンジルアミノ)9-(2-テトラヒドロピラニル)-9H-プリンを処理すると、種無し化ができる事が分かっています。

他にも、抗生物質のストレプトマイシン(商品名:アグレプト液剤)や、フルメット液剤(有効成分は、CPPU:ホルクロルフェニュロン(1―(2―クロル―4―ピリジル)―3―フェニル尿素(商品名:フルメット液剤))という植物ホルモンの一種など、様々な薬剤により、種無し化の研究が進められているそうです。

それもこれも、種を出すのが面倒だという、消費者のワガママに答えるため・・・。個人的には、種があった方が、甘くて美味しいと思ったりもするのですが^^;

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北海道大好き人間

今や葡萄は種なしが殆どです。
今はどうか分かりませんが、山梨県・甲府盆地の果樹地帯にある高校では、自宅が葡萄農家という生徒も多く、ジベレリン処理(地元では単に「ジベ(~する)」と言えば、それだけで通じます)のために学校を休むことが認められているそうです。

山梨のブドウの元祖とも言える甲州種は、房の色が薄いのと、甘くならないことから敬遠されがちで栽培している農家も減りつつあります。
その次に少ないのがネオマスカットです。これは以前、糖度が達しないうちに出荷し、消費者から「酸っぱいネオマス」という悪しきレッテルを貼られた結果です。
いずれも、今はその多くがワイナリーとの契約栽培でそのままワインになってしまいます。

葡萄に限らず果物は、総じて甘い物が好まれる傾向にありますが、野菜ならばトマトがそうです。桃太郎という赤くて甘い画期的な品種が出てから、以前の酸っぱかったり青臭いトマトは見かけなくなりました。
今でもこの時季に地元の農家が出荷しますが、買う人は少ないです。

やはり、見た目と甘さで勝負しないと生き残れないのでしょうね。

by 北海道大好き人間 (2011-08-03 21:42) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
すっかりジベレリン処理についての話が遅くなってしまいましたが、掲載して見ました。
ジベで通用する地域というのも限られていそうですね^^;
ブドウの品種では結構スチューベンが好きだったりしますが、我が家でも子ども受けするのはデラウェアや巨峰です。
by optimist (2011-08-08 21:33) 

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