SSブログ

火星の鉱物分布からの考察 [科学系よもやま話<宇宙の話>]

今日と明日は、私の好きな鉱物に関するお話です。と言っても、鉱物そのものではありませんよ♪

NASAが、火星表面の鉱物分布データを基にした論文を発表しました。
Subsurface water and clay mineral formation during the early history of Mars(リンク)』(Nature 479, 53–60(03 November 2011) doi:10.1038/nature10582)

データは、NASAの「マーズ・リコナサンス・オービター」やESA:European Space Agency)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」によるもので、全部で350ヶ所以上の火星表面の鉱物分布データから、粘土鉱物の種類の特定を行ったのだそうです。
600639main_pia14764-43_946-710.jpg
Credit: NASA/JPL-Caltech/JHUAPL

各画像は、約10km四方のクレーターなどの地形で、左が南緯10.65度、東経98.22度、右が北緯22.06度、東経74.63度に位置します。、また、上の画像は疑似カラー赤外線画像で、下が鉱物分布を示してます。青が、鉄やマグネシウムを含む粘土鉱物。赤は、アルミニウムを含む粘土鉱物だそうです。

今回、このような鉱物分布が分かり、発表者は、火星表面に水が豊富に存在していたのは35億年以上前の、ごく散発的な期間だけだっと結論付けています。

粘土鉱物があるという事は、その存在は火星がかつて今よりも温暖で水のある環境だったことを示していると考えられますが、火星表面には、マグネシウムや鉄でできた粘土鉱物が多く分布しているそうです。
このような粘土鉱物は、水が少なく火山岩からの変質が少ないと考えられるのだとか。

これに加えて、葡萄石(プレーナイト)の存在も確認できた事も、水は地表に豊富にあったのではなく、地下にあったと考える根拠だと主張しています。
3242448.jpg
※上はスペイン産の葡萄石(撮影:optimist)
葡萄石は200℃以上の熱水環境下で作られる鉱物であるため、地表面ではなく地下で作られたと考えるべきだと言うのです。

つまり、基本的に火星の水は地表面ではなく地下にあったと考えられ、火星表面にみられる水が流れた跡のような地形は、地下の水が地表面に噴出したごく短い期間に作られた可能性が高いというのです。

この考えは、昨年このブログで取り上げた『火星に「水の流れ」示す鉱物、ただし「海」はなかった? 欧研究』で、ご紹介した欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)による発表『Wet era on early Mars was global(リンク)』を支持する内容となっています。

葡萄石の存在は、火星における地下の熱水環境を存在を示しているのには同意します。しかし、一方で葡萄石が産出する地球で海洋が存在しないという訳ではありませんから、あくまで海洋が無かったという根拠は表面の粘土鉱物の分布からの推論です。

実際、火星にはかつて海洋が広がっていたと考える学者も居ますので、結論を出すには早計かもしれません。
火星の歴史において、水はどのように存在したのか?そして現在どのように分布しているのか?
想像が膨らみますね。


nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:学問

nice! 5

コメント 2

北海道大好き人間

有人の火星探査機が着陸できればいいのでしょうけど、月と違って「往復」は難しいでしょうね?
仮に片道としても、水や食糧をどうやって運ぶかとか、問題は山積していますから。

by 北海道大好き人間 (2011-11-12 12:55) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
火星への旅行は、本当に何か月もの旅程となりますから、なかなか大変でしょうね。
それでも、生きている間に、火星の有人探査のニュースを見たいものです。
by optimist (2011-11-21 23:29) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。