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『はやぶさ』の帰還とカプセルの再突入・回収にむけて [科学系よもやま話]

先週、JAXA Webサイトのトピックスが更新されていました。
「はやぶさ」の帰還とカプセルの再突入・回収にむけて(リンク)』
日毎、地球へ近づいている『はやぶさ』の今後について、プロジェクトマネージャーの川口氏が寄稿していました。
HAYABUSA.jpg
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
6月に予定されているカプセルの地球への再突入まであと少しですが、これを読むと、まだまだ困難が多いんだな~と思い知らされます。

まず、スペースシャトルなどの地球周回軌道からの再突入に比べると、遥かに離れた場所から再突入させるため、過酷な空力加熱により淀み点総加熱率は15MW/㎡以上とスペースシャトルのノーズに対する場合の30倍以上にもなるそうです。
『はやぶさ』の熱防御技術については、あちこちで見る事が出来ますが、とりあえず一つだけリンクしておきます。
J. Plasma Fusion Res. Vol.82, No.6 (2006)368‐374(リンク)』
カプセルの耐熱材の性能自体には自信があるそうですが、元々2007年夏には帰還する予定が、様々なトラブルにより3年近く飛行期間が延長され、7年間となってしまったので、火薬類を用いる機械的な加工品やカプセルを分離する高分子材料製のバネの経年劣化などを心配されているようです。

また、再突入はやり直しがきかないミッションです。地球周回軌道からの再突入でさえ、再突入回廊と呼ばれる降下角度より浅ければ大気の層にはじかれて、再び宇宙に投げ出されてしまいますし、深いと空力加熱で燃え尽きてしまいます。でも、突入のタイミングはトラブルがあれば地球を周回して、次を待つことが出来ます。
しかし、はやぶさの場合、次はありません。今!ってタイミングを逃すと、地球の周りを回っている訳では無いので、そのまま回収は不可能となってしまうのです。

また、漏洩燃料の再ガス化も不安な要素として挙げられていました。
イトカワから離脱する際に、スラスターB系から燃料のヒドラジンが漏れ、気化して噴出した事で、一時姿勢制御不能になった経験がある『はやぶさ』。その後、何度か残存ガスの排気を目的としたベーキングを行ってきたそうですが、5月以降は、地球公転軌道よりも内側に入るため、探査機上面の温度がどんどん上昇します。そこで、再びガスが噴出しないかも心配されているそうです。

これまでにも、幾多のトラブルを克服して、地球から28,972,550km(日本時間 3月11日の09時00分 現在)までたどり着いた『はやぶさ』の、最後の一踏ん張りに期待しましょう。
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コメント 7

Loby

大気圏再突入と言えば、映画「アポロ13号」を思い出します。あの時は(映画では)たしかコンピュータなしで再突入角度を決めて実行し、幸運にも無事に生還することができました。
「はやぶさ」の再突入が成功することを祈っています。
by Loby (2010-03-16 01:25) 

yablinsky

「はやぶさ」がんばれ!でも私にはどうしても蚊に見える。
by yablinsky (2010-03-16 07:50) 

optimist

Loby さん、こんばんは。
アポロ時代のコンピューターの演算能力を考えると、よくもまあ月まで人間を往復させたもんだと思います。
映画「アポロ13号」は感動的でしたね♪
by optimist (2010-03-16 22:26) 

optimist

yablinsky さん、こんばんは。
はやぶさが蚊だとして、回収されるカプセルは卵でしょうかw
by optimist (2010-03-16 22:28) 

えがみ

宇宙開発もまだまだ課題が多いんですね。

by えがみ (2010-03-16 22:59) 

optimist

えがみ さん、こんばんは。
課題が多いというよりは、次の小惑星探査衛星のためにクリアすべき課題を沢山用意してあるという感じかもしれません。
小惑星とランデブーした事や、イオンジェットエンジンを長期間運用した事で十分目標は達成したと思いますが、ココまで来たら、サンプル回収まで是非やり遂げて貰いたいですね。
by optimist (2010-03-17 00:08) 

北海道大好き人間

このレスを書いている時点で、すでに「結果」が出ていますから、詳細のレスは最後にしますが、いろいろな困難があったのですね。
by 北海道大好き人間 (2010-06-14 21:37) 

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