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アルコール脱水酵素も忘れてはいけません。(アルコール代謝の話#4) [科学系よもやま話]

ここまで、ずーっと飲める飲めないは、ALDH2に拠るものが大きいと説明してきました。でも、アルコール脱水素酵素(ADH)も忘れてはいけません。

お酒を飲んで気持ちよい状態はエタノールの影響で、悪酔い・二日酔い・肝臓へのダメージなどは、分解性生物のアセトアルデヒドが原因だということは、これまでにお話した通り。つまり、血中にアルコールがあるけどアセトアルデヒドが無い常態を維持できる人が、お酒を飲んだときに気分良くなれる人ってわけです。

そして、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性に個人差があるように、アルコール脱水素酵素(ADH)の活性にも個人差があります。ADHにはいくつかありますが、日本人の場合ADH2に個人差があります。

それは、ADH2の47番目のアミノ酸がアルギニン(Arg)か、ヒスチジン(His)かの違いに因るものです。ADH2が不活性なのがアルギニンの場合で、活性なのがヒスチジンの場合です。ALDH2で説明したのと同様に、遺伝子は二本対になっていますから、組み合わせは3種類となります。
つまり、His/His,Arg/His,Arg/Argの3タイプです。それぞれ活性は、His/His:Arg/His:Arg/Arg=100:25:1。つまりHis/His型の人はArg/Arg型の人に比べあっというまにアルコールが分解されてしますんです。

さて、ここで、ADHとALDHの活性/不活性を表にしてみましょう。
表.jpg
TypeⅠは、ALDH活性が強く、ADH2活性も強い人です。アルコールをガンガン摂取してもケロッとしてどんどん分解してしまいます。俗にいう『うわばみ』タイプです。

TypeⅣやⅦの人は、ALDH活性が強いけど、ADH2活性が弱い人です。アルコールが代謝されずに血中に長く残る一方、アルデヒドは分解するので、頭痛や二日酔いなどの症状が出ない。つまりほろ酔い気分が続くので、痛飲する事が多いタイプと言えます。
TypeⅠが、酔わないのに対して、酔った状態が長く続くため、酒量が増える事が心配され、肝臓を痛めやすいとも言えます。

TypeⅡやⅢの人は、ALDH活性が弱いけど、ADH2活性が強い人です。このタイプがお酒が苦手と感じる人になります。つまり、エタノールがすぐにアセトアルデヒドになるので、ほろ酔い気分に浸れず、一方でアセトアルデヒドが分解し難いために気分が悪くなります。でも悪い事ばかりではありません。お酒で幸福感が得られないので、アルコール依存症や肝臓を痛める可能性は低いでしょう。

TypeⅤ、Ⅵ、Ⅷ、Ⅸの人は、ALDH活性が弱く、ADH2活性も弱い人です。少量のお酒を楽しむ分には、アルコールが分解されるのも遅いため、酔った状態が楽しめます。その点でTypeⅡやⅢの人と違い、ALDHが低く本来はお酒に弱いのに、お酒が好きという人が存在するのです。ただ、長時間アルコールが蓄積する上に、出来たアセトアルデヒドも分解に時間がかかるため、二日酔いになりやすいタイプです。そして、肝臓を一番痛めるタイプとも言えます。

皆さんは、どのタイプでしょうか?私は多分TypeⅢですね。お酒は酔えない、気持ち悪いと良い事が無い・・・。なんだか存した気分です^^;
昨日ご紹介したようにALDH2のタイプについては、比較的簡単に、精度良く判定できます。しかし、ADHついては、ある程度の自己診断しかできません。もし、知りたいという人は遺伝子診断が確実です。

さて、話はもう少し続きます。これまでにご紹介したALDH2やALD2の型の割合って、人種によっても違うし、日本国内でも地域によって差が大きいんです。次回は、この辺のお話をして『アルコール代謝の話』を終わりにしたいと思います。

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北海道大好き人間

私もTypeⅢに近いですが、酔えます。酔うと、視線が定まらなくなり、ろれつが回らなくなるのが自分で分かります。
by 北海道大好き人間 (2010-06-14 22:30) 

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