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火星の北極冠、2つの謎がレーダー観測で解明 [科学系よもやま話]

今日ご紹介するニュースは、2010年4月29日発行の科学誌ネイチャー(Nature)掲載の、米テキサス大学オースティン校のジャック・ホルト(Jack Holt)氏らによる論文についてです。
The construction of Chasma Boreale on Mars(リンク)』
内容は、火星にある大峡谷カズマ・ボレアレ(Chasma Boreale)の成因に関するもの。

火星の北極には、直径1000kmもの極冠があります。この極冠は、氷とちりが厚さ3kmも堆積していると考えられています。また、写真をご覧頂けるとお分かりのように、旋毛のような渦巻き状の谷も特徴的です。
PIA13163.jpg
PIA13163:Northern Ice Cap of Mars
Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS
そして、この北極冠には、長さ500km、幅100km、そして深さ2kmもある大峡谷『カズマ・ボレアレ(Chasma Boreale)』が確認されています。
PIA04296_modest.jpg
PIA04296: Scarp at Head of Chasma Boreale
Credit:NASA/JPL/MSSS
この論文では、これらの特徴的な地形がどのように形成されたのか?について、考察されています。

これまで、これらの地形が出来た要因として、例えば「大峡谷は氷床が溶けた際の大洪水で形成された」、そして「放射状の谷は、火星の時点による遠心力によってできた」という説が唱えられていました。しかし、著者らは、これらの説は誤りであると結論づけています。NASAの火星探査機『マーズ・リコネサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter:MRO)』による最新のレーダー・データを分析した結果、北極冠の表面下の層は厚さや向きが非常に複雑で、大洪水で一気にできたのではなく、長期間に渡って、氷とちりの堆積と強力な火星風による侵食が繰り返されて形成されたと考えているそうです。

地球では水による浸食が支配的ですが、火星では風によって侵食が進むんですね。

渦巻き状の谷の形成過程ついては、やはり火星風による侵食で、自転の影響で風向きが変わる(コリオリの力によるもの)ことで、独特の渦巻き模様ができたと推測していました。

火星探査と言えば、火星探査車『キュリオシティ』が2011年11月~12月の間に打ち上げが発表されました。火星到着は2012年8月の予定です。
これまでに火星地表に降立った探査車(ローバー)は、マーズ・パスファインダーのソジャーナ(1997年に火星に到着)、マーズ・エクスプロレーション・ローバーのスピリットとオポチュニティ(同2004年)がいます。でも、これらの探査車より大重量のキュリオシティは、着陸にエアバッグが使えないそうで、スカイクレーンと呼ばれる装置からキュリオシティを吊り下げて地表に着陸させるんだとか。なんか凄いですね。

今後の火星探査にも要注目です。


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コメント 1

北海道大好き人間

>地球では水による浸食が支配的ですが、火星では風によって侵食が進むんですね。

おそらく月も風が吹くとすればそれによって浸食されるのでしょう。
極端な話、火星にも水があれば生命が存在する可能性も高くなるのではないでしょうか?
by 北海道大好き人間 (2010-06-15 18:49) 

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