横浜・元町、クラゲ大発生 繁華街の川にびっしり

横浜市中心部の元町商店街のすぐ脇を流れる中村川で、ミズクラゲが大量発生しているとニュースになっていました。確かに先週末中華街に行ったときに、ふと川面を見ると、ミズクラゲがビッシリ・・・。思わず写真を撮ったりしたのですが、ニュースになるとは思いませんでした。

そういえば、３月２４日に台風１号が観測されてから、全く台風が発生せず、結局台風２号が発生したのが７月１２日でした。もしかしたら、このような状況も大発生に影響しているのかもしれませんね。

撮影日2010年7月17日
記事中では『専門家はエサのプランクトン発生や風、海流の影響を指摘』とありますが、ちょっと調べてみました。

日本で問題になるのが東京湾や瀬戸内海などの内湾域におけるミズクラゲと、対馬暖流にのってやってくるエチゼンクラゲです。近年のクラゲ類の大発生などに関する論文は、東京海洋大学などや、独立行政法人 水産総合研究センターの研究情報（『水産総合研究センターの研究情報（リンク）』）などで、見ることができます。エチゼンクラゲの粉末化とか駆除方法など、様々な研究がされているようです。
また、東京湾に限らず世界中の海域でクラゲ類の個体数が増加し、大量発生も確認されてるんだそうですよ。

東京湾のクラゲが増えた原因についての考察は、『平成２０年東京大学海洋研究所共同利用研究集会-我が国における刺胞動物研究- （リンク）』によせられた東京海洋大学の石井　助教のお話が分かり易かったです。簡単にまとめると次の様な話でした。
　
クラゲが大発生する、一因とされるのが、富栄養化に伴う餌の増加です。それも、単に富栄養化が進んだ結果ではなく、Ｓｉ/N （珪素／窒素）比が低下が平行して起こることが一因だそうです。これは、人口集中による溶存態無機窒素の増加と、河川域上流部におけるダムの増加や河川床の改修や埋め立てによる干潟の消失に由来するケイ酸塩類の濃度の減少が原因です。

栄養塩類が多いのに珪酸塩類が少ないとどうなるのでしょう？植物プランクトンは活発に増えるのですが、ケイ酸塩類を必要とするケイ藻類はＳｉが少ない環境のため、個体数が減ります。その結果、よりサイズが小さい微小鞭毛藻類の占める比率が上昇するんです。植物プランクトン相が小型化した結果、その捕食者である動物プランクトン相もまた小型化します。小型橈脚類や小型鞭毛藻類を摂餌する微小動物プランクトンが占める割合が増えるんです。

このように起こった動物プランクトン相の小型化が次の捕食者である魚類やクラゲにも影響を与えます。餌が小さいために視覚で獲物を捕らえる魚類より、機会的（接触）捕食者であるクラゲ類に有利に働くと考えているそうです。実際に、採集されるミズクラゲの胃腔内容物には、小型橈脚類のO. davisae が年間を通して極めて高い割合で出現しているそうです。

つまり富栄養化が進行し、且つＳｉ/N比が低下した内湾域では、・微小鞭毛藻類→微小・小型動物プランクトン→クラゲ類という食物連鎖が支配的になっているというわけ。

これに加えて、最近の研究では、富栄養化に伴う底層域の貧酸素化もクラゲが増える要因と分かってきたそうです。

つまり、海底付近の貧酸素化は、動物プランクトンや魚類等が生きるには不利となる。でも、クラゲ類に与える影響が低いし、逆に餌生物の逃避行動が鈍くなる上に、競合相手の魚類が減る事から生存に有利になるというんです。

ところで、クラゲが海底の貧酸素水塊の影響を全く受けないかと言えば、そうではありません。クラゲは一生フヨフヨ漂って生活するわけではないからです。途中、付着生活期であるポリプ世代を経なければなりません。ところが、ポリプ世代には、高い貧酸素耐性と貧酸素水塊内における無性生殖が観察されているんです。つまり、貧酸素状態でも大丈夫で、無性生殖でガンガン増殖しちゃうんですって。あらら・・・

富栄養化に、Ｓｉ/N （珪素／窒素）比の低下、海底付近の貧酸素化とくれば、東京湾そのもの。そりゃ～クラゲが増えるわけですね＾＾；

結局、我々人間の生活排水や治水護岸工事の結果が、クラゲの大発生を招いているようです・・・。

コメント 2

一言でまとめれば、人為的な影響も含めて、生態系がおかしなことになっているというわけですね。
by 北海道大好き人間 (2010-07-22 00:31) 

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
そうですね。本来とは違った生態系になっちゃった原因は、完全に人間にあるようです＾＾；
by optimist (2010-07-22 22:35)