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農業をする?アリ、ハキリアリ [不思議な生き物・奇天烈生物紹介]

ハキリアリの仲間は、中南米に生息するしています。その名の通り、葉を切り取って巣に運ぶ姿は、非常にユーモラス。
Leafcutterperu.jpg
(From Wikipedia, the free encyclopedia)

せっせと巣に持ち帰った葉は、そのまま食べる訳ではありません。集められた葉は、巣の中で細かく砕かれ、パルプ状にされてから、(ハキリアリの排泄物を塗り付け)菌を植え付けられます。この菌が成長すると、その胞子がハキリアリの食料になるんです。つまり巣の中でキノコ栽培をしているんです。

先日『NHKスペシャル ホットスポット 最後の楽園』第二話(2011年2月6日放送)で、ブラジルのセラード自然保護地域(世界遺産)の生態系を紹介していたので、このハキリアリをご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんね。
この番組中では、ハキリアリとタテガミオオカミ、そしてロベイラという植物の共生関係が、紹介されていました。

タテガミオオカミは、乾季のセラードでも実をつけるロベイラという植物の実を腎臓の寄生虫を駆除する虫下しとして利用しています。そして、(マーキングのため?)高い所を好んで糞をする習性があります。ハキリアリの巣などは、周囲より小高くなっているので、巣の上に排泄する場合があるんです。
当然ながら、巣の上にころがったタテガミオオカミの糞にはロベイラの種が含まれています。これをハキリアリが、キノコ栽培の肥料として使うために巣に運びます。一部の種は、キノコの養分とならず、発芽してハキリアリ巣を利用して成長します。ハキリアリは、その葉やタテガミオオカミの糞に含まれる種などを再びキノコ栽培に利用する。という循環です。

ところで、ハキリアリと彼らが栽培しているキノコ(アリタケ)の間にも共生関係が成り立っています。
ハキリアリはアリタケを食料に利用していますが、それはアリタケそのものを食べているのではなく、胞子から糖分を接種しています。そのため、ハキリアリは、アリタケ以外の菌が混ざらないように常に掃除をしていますし、外敵からもアリタケを守り育てるのです。
更に、養分となる葉にも注意を払ってくれるんです。ハキリアリに対しては無害でもアリタケには有毒な物質テルペノイドを含む葉は、巣に運び込む事はないそうです。

こうしてアリタケは、アリたちに餌を提供する代わりに、守られ養分を確保して貰えるので、アリの巣の中で増えていきます。実際、アリタケ(写真)は、ハキリアリの巣の中以外では見つかっていません。
800px-Atta_colombica_queen.jpg
(From Wikipedia, the free encyclopedia)

葉っぱに含まれるセルロースを分解すると糖分を得られるのですが、ハキリアリはセルロースを消化する事ができません。それを代行するのがアリタケという訳。
ハキリアリは、沢山の葉を糖分に分解してくれる存在無しには生きられません。一方、アリタケは蛋白質をアミノ酸に分解する酵素を持っていないので、ハキリアリの巣で無ければ育ちません。アリタケの養分であるアミノ酸やそれを分解する酵素は、葉に塗り付けられたアリの排泄物に依存しているんです。

女王アリが巣立つ際には、必ずアリタケの菌を口の中に入れて運んでいくんだとか。
体内の共生菌と違って、育てていたアリタケが全滅すると、もう新しいものを作ることは不可能・・・。当然ながらその巣は全滅することになります。
それだけハキリアリとアリタケの間には、強い依存関係があると言う訳です。

参考文献:『共進化の生態学-生物間相互作用が織りなす多様性-』(種生物学会 文一総合出版 定価3,990円)
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タグ:ハキリアリ
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北海道大好き人間

テレビの放送は見ていませんでしたが、これだけ見事な共存共栄の例は見たことがないです。
それも、微妙なバランスの上に成り立っていることもまた凄いと思います。


by 北海道大好き人間 (2011-02-28 14:12) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
生物の共存関係って調べると、普通にアチコチで見られますが、我々人間も含め、多くの種がお互いに影響を与え合ってバランスを取らないと一気に崩れるんだろうなと実感させられます。
by optimist (2011-03-01 22:26) 

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