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農業をする?シロアリ、キノコシロアリ [不思議な生き物・奇天烈生物紹介]

先日ご紹介したハキリアリの他にもキノコ栽培をする物が居ます。それが、キノコシロアリです。

ハキリアリとは、育てている菌類の違いもありますが、ハキリアリが葉を砕いて、それに排泄物を付着させて、キノコを栽培するのに対し、シロアリは枯死植物を食べて、糞(擬糞)を積み上げた物に、菌を植え付ける点が異なります。

シロアリは腸内に共生細菌を持つのですが、それに加えて腸内原生生物によって枯死植物を分解する下等シロアリと、担子菌類(シロアリタケ属)を栽培する事でそれに替えている高等シロアリに大分されます。どちらもシロアリ自身は、セルロースを分解して栄養とする事ができませんが、前者は腸内共生原生生物の力を借りて、後者は担子菌類に分解させる事で、栄養として接種出来るまで分解させているんです。

下等シロアリの腸内には、共生原生生物のほかにバクテリアや古細菌も共生していて、入れ子状態のような多重共生系を構成していることが知られています。個人的には、こちらのタイプも面白いと思います。これらの細菌については、食料と競合しないバイオエネルギー源としてのセルロースに注目が集まる中、近年研究が進んでたりもします。
独立行政法人 理化学研究所プレスリリース『シロアリの腸内共生原生生物の研究(リンク)』

ちょっと脱線してしまったので、キノコシロアリに話を戻します。
今日ご紹介するキノコシロアリもまた面白い戦略を取った生物と言えるでしょう。
 
キノコシロアリは、菌園と呼ばれるハチの巣状の塊を作り、担子菌(シロアリタケ)を栽培して栄養源にしています。キノコ栽培の培地となる菌園は、リグニンとセルロースで構成されていますが、要は擬糞で作られています。
口から摂取したけど、分解できなかったセルロースなどを担子菌に分解して貰う。そして、分解が進んだ物を食べ、それでも分解できなかった分は、再び菌園作りに利用して、担子菌に分解させるという事を繰り返しながら、シロアリの巣の中で、共生する担子菌も繁栄していきます。

このように、キノコシロアリは、担子菌に枯死植物を分解させているのです。シロアリはリグニンの分解が進み、軟らかくなった菌園や、菌園上に生えてくる菌糸を食べる代りに、担子菌を他の菌類から守り育てる役目を果たしています。
もし、何らかの理由で菌園からシロアリがいなくなると、子実体であるキノコが生えてくるそうです。そして、新天地を求めるってわけ。

日本でもキノコシロアリを見る事ができます。沖縄県の西表島、石垣島などの八重山諸島と沖縄本島に分布しているそうです。沖縄本島では、琉球王朝時代の首都、首里周辺にだけ見る事ができるそうです、琉球王朝時代にシロアリタケを得るために持ち込まれた可能性を指摘される所以です。
そう、キシメジ科に属するこのシロアリタケはとてもおいしいそうです。地元では高級食材なんだとか。それだけに、食材用に持ち込んだとする説も納得できる気がします。

もし、そうであれは、キノコシロアリにシロアリタケを育てさせ、そのキノコを食べたいが故に繁殖地域を広げた人間も、また共生関係にあると言えるかも知れませんね。
 
参考文献:難培養微生物の利用技術(工藤俊章/大熊盛也,シーエムシー出版(2010年2月)
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北海道大好き人間

木造家屋を食い荒らすシロアリとは別種なのでしょうか?
あちらも一応「枯れ木」を食べていますが、体のつくりが違うということでしょうね。

by 北海道大好き人間 (2011-03-01 00:23) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
文中にも書きましたが、家を食い荒らすシロアリは、下等シロアリと呼ばれる種です。こいつらは、腸内原生生物によって枯死植物を分解するので、キノコを育てなくても自分の腸内で全てを完結してるんですよ。
by optimist (2011-03-01 22:28) 

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