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むかしむかし、ミドリムシは紅かった? [科学系よもやま話<生命の起源・進化>]

今日紹介するのは、東京大学のプレスリリースから。
むかしむかし、ミドリムシは紅かった?—遺伝子水平伝達がもたらした光合成生物のゲノム進化—(リンク)』です。

ちょっとタイトルが面白いでしょう?

真核生物の進化を考える上で、近年支持されているのが細胞共生です。細胞共生とはある生物の細胞が他の生物の細胞内に入り込んで一つの固体として生きる状態を指します。

好気性細菌を取り込んだと考えられるミトコンドリア、或いはシアノバクテリア様の細菌を取り込んだと考えられる葉緑体がその例です。このような細胞共生は、決して珍しいものではなく、藻進化の過程ではこのような細胞共生が、頻繁に起きていたと考える人も少なくありません。

今回報告されたミドリムシを例にとると、ミドリムシはゲノム解析から、鞭毛虫に近い原生動物の仲間に近いと出ています。ところが、葉緑体が独自にもっている遺伝子による解析では、緑藻の仲間と出ている。つまり、、鞭毛虫に近い原生動物が緑藻の仲間と細胞共生した結果、生まれた生物だと考えられるんです。
どうやって?それは、餌として補食された藻類から遺伝子が移動した(遺伝子水平伝達)と推測されています。

ここで、緑藻の仲間は、シアノバクテリア様の細菌を取り込んだとされる一次共生で生まれた光合成真核生物(一次植物)です。ミドリムシでは、その緑藻の仲間が、鞭毛虫に近い原生動物に取り込まれたってわけ。これを二次共生と呼びます。

このような二次共生は、緑藻などの一部の仲間を除いた藻類で多く見る事ができるそうです。そして、このような藻類の葉緑体は、三重や四重の膜をもっています(ミドリムシの葉緑体は三重膜)。普通、葉緑体は二重膜を持つのですが、一次植物を取り込んだので四重膜を持つと考えられています。しかも、四重膜をもつクリプト藻では、退化したと思われるもう1つの核(核様体=ヌクレオモルフ)まで見つかっているんです。

ところで、二次共生を経験する以前のミドリムシ類の祖先は、細菌や他の藻類を補食して生活する、葉緑体を持たない鞭毛虫に近い原生動物だと上でご紹介しました。
しかしこの論文によれば、ミドリムシの全遺伝子情報の中に、この祖先的原生生物にも葉緑体の祖先である緑藻にも似ていない遺伝子が報告され始め、ミドリムシが「祖先的生物」と「二次共生した緑藻類」の単純な「足し算」として考えていいのだろうか?という問題が浮上してきたんだそうです。

著者らは、ミドリムシの細胞核のゲノム情報を対象にして、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータを使った大規模分子系統解析プログラムを構築し、解析を行った結果、ミドリムシの核ゲノム(祖先的原生動物に由来する)が、紅藻に由来する葉緑体を持つ二次植物だった可能性を指摘しています。

つまり、かつてミドリムシの祖先は、紅藻に由来する葉緑体を持つアカムシ?であり、それが後に緑藻由来の葉緑体を獲得して今の姿になったというのです。

実に、面白いです。
小さく原始的に見えるミドリムシの様な生物が、そのような進化を経ているなんて・・・。

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北海道大好き人間

つまるところ、ほぼ全ての動植物が突然変異の繰り返しの上に成り立っているわけですよね。それも気が遠くなる様な時間を経た上で。

by 北海道大好き人間 (2011-04-25 16:12) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんにちは。
一見原始的に見えるゾウリムシも、実は高度に進化した生物だと言うのも面白ですよね。
どんな生き物であっても、それぞれになんらかの進化・突然変異を経て今に至ると考えると、感動すら覚えます。
by optimist (2011-05-04 13:15) 

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