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International Linear Collider(ILC) [科学系よもやま話]

以前、原子核研究機構(CERN)が所有するLHC(Large Hadron Collider:大型ハドロン衝突型加速器)のニュースをご紹介した際に、円形粒子加速器について少しお話しました『「質量の起源探し」開始 ビッグバン状態再現する加速器』。

また、リンクのニュースにもあるように、米フェルミ国立加速器研究所の国際研究チームが、現在の素粒子物理学で想定されていない未知の粒子を発見したかもしれないと発表した事もあり、円形粒子加速器に注目が集まっています。

でも実は、大出力を求めて大型化してきた加速器ですが、LHCの次世代ではちょっと変化がみられます。
今日は、そんな次世代加速器についてのお話です。

加速器を使った研究は、基本的により高いエネルギーを求めてきました。加速器は、加速した粒子同士を衝突させ、物質の素は何かを探る基礎物理学の研究と、高エネルギーの粒子が曲がる時に放つ強力な放射光を利用した研究に用いられてきました。そこでは、より高いエネルギーを生じる加速器が誕生するたびに、新しい粒子が発見されてきたんです。
そして、研究者は更なる高エネルギーを作れる加速器を求め、どんどん加速器は巨大化してきたというわけです。

しかし、その建設費がとんでもなくかかるので、大きさに頼るのではなく、高性能の加速器のダウンサイジングが始まっているようです。
KEK 先端加速器の一般向けwebページ(リンク)』
KEK 先端加速器推進部のwebページ(リンク)』
しかし、円形加速器を使って粒子を高いエネルギーまで加速すると、その粒子は光を放出しエネルギーを失ってしまうんです。しかも高いエネルギーになるほど失うエネルギーは大きくなる・・・。これでは、せっかくためたエネルギーが漏れ出すようなものです。まあ、このように放出される光は、別の目的で使われ、加速器の重要分野にもなっているのですが、純粋に高いエネルギーを粒子に与えるには邪魔にしかなりません。

それでは、高いエネルギーでの実験はどうすれば良いのでしょう?その回答の一つが、加速器の形を円形から直線の形へ変えればよいという物です。この考えに従って計画されている線形加速器が衝突型線形加速器(リニアコライダー)と呼ばれる装置です。

2004年夏、世界の高エネルギー物理学研究者・加速器研究者は、超伝導技術に基づいたリニアーコライダーを国際協力で建設することについて合意しました。これは“International Linear Collider(ILC)”と呼ばれています。このILC計画では、約1TeVまでのリニアーコライダーをつくり、トップクォークの対生成、ヒッグス粒子、超対称性粒子などの発見をめざしており、こうした成果の上に立ち質量の起源、力の大統一、さらには宇宙創成の謎を突きとめることができると期待されています。

が、これまた世界同時不況の中、なかなか順調に進んでいるとは言えないようです。もはや研究装置自体を、一国が作るという物では無い以上、仕方ない事かもしれません。


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北海道大好き人間

重力加速器の実物を見たことはないですが、その大きさに驚かされるのでしょうね。

by 北海道大好き人間 (2011-05-22 19:14) 

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