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高温超伝導バルク磁石を駆使して世界初のMRI画像を撮影 [科学系よもやま話<新薬・新技術>]

今日は、理化学研究所のプレスリリースから、高い空間分解能を高感度で捉えられるMRIについてご紹介します。
高温超伝導バルク磁石を駆使して世界初のMRI画像を撮影(pdfファイル)』

通常のMRIの空間分解能がmm程度なのに対し、このMRIで撮影した場合の空間分解能は、セロリで100μm、マウスの胎児では50μmというから驚きです。二桁も小さいレンジです!

このMRIは、独立行政法人理化学研究所、国立大学法人筑波大学、株式会社エム・アール・テクノロジーによる共同研究の成果だそうです。このような高空間分解能が得られるのはMRIの磁場を発生させる磁石にあるそうです。

現在普及しているMRIは、強磁場均一空間を発生させる磁石として、低温超伝導体でできた細線をコイルに巻き、液体ヘリウムで4.2K(≒-269℃)まで冷却した超伝導電磁石が用いられています。

一方、線材でなくても塊の状態(バルク体)でも強磁場が得られる事が知られています。しかし、MRIは、分析に用いるために、強磁場というだけでなく、非常に均一な磁場あ必要なのだそうです。
従来のイットリウム系銅酸化物(YBCO系)は、バルク体だと、均一な磁場の生成が困難なので、線状で使われると言うわけです。ところが、今回ユーロピウム(Eu)を用いたEuBCO(ユーロピウムバリウム酸化銅)を6層に積層し、均一な磁場空間中で磁化させる事で、ナノレベルで均質にしたドーナツ型の高温超伝導バルク磁石(外径60mm、内径28mm、厚さ20mm)の開発に成功したおかげで、MRIに必要な4.7Tの強磁場強磁場を、均一に発生させることに成功したんだとか。

この高温超伝導バルク磁石を用いてMRI画像を撮影すると、空間分解能 50μmという高空間分解能が得られたわけですが、ここまで高い分解能が得られた事で、核磁気共鳴を利用した顕微鏡(MRマイクロスコピー)を作る事も技術的に可能だと示されました。
非破壊で、小さなものの内部構造をミクロンオーダーで見る事ができる顕微鏡だなんて、正に、夢の装置ですね。

また、この高温超伝導バルク磁石は、従来の線材を活用した超伝導磁石に比べ大幅に小さく、机上サイズの小型MRI装置などへの展開も期待されるようです。

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コメント 4

アヨアン・イゴカー

小型で安価というのが画期的ですね。
by アヨアン・イゴカー (2011-05-15 14:35) 

optimist

アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
まだまだ実用化となると時間がかかると思いますが、小型の携帯型MRIなどが出来れば、僻地での医療などにも使えるようになるかもしれませんね。
by optimist (2011-05-16 21:52) 

北海道大好き人間

初歩的質問ですが、MRIはレントゲン(X線)とは原理が違うのでしょうか?
私は至って健康でそういうもののお世話になったことがないですし、福島のこと等もあるので少々気になっています。

by 北海道大好き人間 (2011-05-22 19:56) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
断層画像が得られるという点では、X線CTとよく似ていますが、核磁気共鳴(NMR)を利用したCTがMRIです。X線とは違い、放射線被曝が無いのが利点ですが、造影剤の副作用の可能性というX線には無いリスクもあったりするそうです。
核磁気共鳴については、簡単に説明する自信が無いのですが、そのうち取り上げるかも知れません。
by optimist (2011-05-23 22:49) 

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