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絶滅危惧種からのiPS細胞作成に成功 [科学系よもやま話<クローンの話>]

今日取り上げるのは、絶滅の危機にある動物からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作ったという報告についてのニュースです。
論文は、9月4日付けの米科学誌「Nature Methods(ネイチャー・メソッズ)」に掲載されています。
Induced pluripotent stem cells from highly endangered species(リンク)』

以前、クローニングによる絶滅動物や絶滅危惧種の再生というテーマについてご紹介した事があります。
科学系よもやま話<クローンの話>

このニュースになっている技術は、クローンではなく、絶滅危惧種のiPS細胞を作ったという物です。但し、この技術で絶滅の危機にある種が救えるかについて、私個人としては、懐疑的な意見です。絶滅動物の細胞から精子と卵子を作るなどのテーマもクローニングと同様の問題を孕んでいると思います。
この辺りについては、以前の記事でも書いていますので、良かったらご覧下さい。

絶滅(危惧)種のクローニングの可能性と懸念点』で指摘したように、一個の固体の遺伝情報を残した所で、また、仮にiPS細胞による受精で個体数が増えたとしても、生息環境の破壊から絶滅が危惧されているなら、結局のところ、野生では生きられないでしょう。何しろ生息環境が破壊されているので、再び個体数が減るのが目に見えています。
となると、絶滅危惧種を危機から救うのは、iPS細胞やクローニング(だけ)では無理という気がします。

つまり絶滅危惧種を保護するには、今ある環境ごと保護しなくては、なんの解決にもならないのではないでしょう。
iPS細胞や、クローニングは絶滅(危惧)種の保護の切り札足り得ないと考える所以です。

やはり、地道な環境保全。これに勝る回避方法は無いと思われます。開発と保護、そのバランスのありようは、なかなかに難しい問題ではあると思いますが、忘れてはいけないテーマではないでしょうか。


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アヨアン・イゴカー

ホッキョクグマを絶滅の危機から救うためには、仰る通り、寒冷な気候や氷を護らねば何にもなりません。ホッキョクグマたちが少なくなった氷の上を歩いているのを見るの、哀れで、人類の自己中心性が申し訳なく、悲しくなります。
by アヨアン・イゴカー (2011-09-12 23:46) 

北海道大好き人間

確かに、生物が成育するだけの環境を先に整えなければ、いくらクローン技術が発達しても無理な話ですね。

by 北海道大好き人間 (2011-09-14 18:30) 

optimist

アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
工業活動により、救われる命が増えたのも事実ですし、もはや後戻りできないというのもあると思います。
ですが、確かに住処を奪われる生き物たちの映像を見ると、心が痛みますね。

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
クローンにせよ、iPS細胞にせよ、それ単独で種の温存は難しいという事は、もっと語られても良いと思うのですが、あまり話題にのぼらないのが残念です。
by optimist (2011-09-20 21:21) 

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