始祖鳥の化石から化学成分を検出、古代生物研究に新たな道 [科学系よもやま話]
今日ご紹介するのは、米SLAC国立加速器研究所のプレスリリースです。
『May 10, 2010 - X-Rays Reveal Chemical Link Between Birds and Dinosaurs(リンク)』
この報告は、米SLAC国立加速器研究所(SLAC National Accelerator Laboratory)と英マンチェスター大学(University of Manchester)の共同で研究の成果です。150年前に発掘された始祖鳥(Archaeopteryx)の化石に、米SLAC国立加速器研究所の放射光施設SSRL(Stanford Synchrotron Radiation Lightsource)を使って、高エネルギー蛍光X線法により、化石に含まれる元素を特定したそうです。
始祖鳥の化石が最初に発掘されたのは、ドイツのゾルンホーフェン(Solnhofen)。ゾルンホーフェンの化石といえば、一昨年の第21回 東京国際ミネラルフェアの特別展示だったのですが、サブブログに幾つか写真を載せていますので、良かったらご覧下さい。『行ってきました!第21回 東京国際ミネラルフェア(第2回)』
この始祖鳥の化石は、始祖鳥の骨そのものではなく、長期間押しつけられてできた痕跡化石ではないかと考えられていたそうです。しかし、この分析により3価のリンやなどを含む事がわかり、化石化した羽根の断片も含まれていると分かったんだとか。現代の鳥類の羽根にも3価のリンなどの物質が含まれる事から、恐竜と鳥類の関係を示す化学的な証拠とも言えるそうです。
スプリング8などを使った化石の分析なんてのも、これからの古生物学では珍しくなくなるのかもしれませんね。
今回は、始祖鳥に関するニュースをもう一つご紹介します。14日付の米科学誌サイエンスに発表され『Did First Feathers Prevent Early Flight? (リンク)』に関するニュースです。
この報告によると、始祖鳥や孔子鳥などの初期の鳥とされる種は、羽ばたき飛行はできず、滑空しかできなかったと言うのです。
これは、化石の始祖鳥と孔子鳥の風切り羽根の長さや羽軸の太さ、それぞれの体重を調べ、飛ぶ際に翼にかかる荷重と翼の強度を推定し、現生の4種の鳥類(ユリカモメやモリバト、ワタリアホウドリ、シロエリハゲワシ)と比較した推論です。
現生の4種の鳥類の翼は、全て体重の6~13倍の荷重に耐えられるのですが、羽軸が1ミリ程で非常に細くい始祖鳥は体重の0.55倍、孔子鳥は0.39倍で体重すら支えきれないと言うのが彼らの主張。
恐竜の体重が現在の鳥より軽いか骨の強度が強いって考えは無いのだろうか?と思ったのですが、筆者らもそれは考慮していて、仮に始祖鳥と孔子鳥の羽軸が、現生鳥類とは異なる構造で更に強度があったと仮定しても、それぞれ4倍と2.9倍でしかなく、羽ばたき飛行には十分な強度とはいえないとしています。
でも始祖鳥が現在の鳥より軽いなら更にこの数値は大きくなるかもしれませんね。ただ、この辺は推論にしかなりませんし、骨の強度が弱く、体重が重い種が繁栄して現在の鳥になるってのも違和感があるので、やはり羽ばたき飛行はできなかったのかな?
国立科学博物館の真鍋真研究主幹(古生物学)によれば、羽ばたき飛行ができないとなれば、将来、始祖鳥や孔子鳥の進化上の位置づけを恐竜に分類し直すことになるかもしれないそうですよ。
本当のところは、どうなんでしょうね?
『May 10, 2010 - X-Rays Reveal Chemical Link Between Birds and Dinosaurs(リンク)』
この報告は、米SLAC国立加速器研究所(SLAC National Accelerator Laboratory)と英マンチェスター大学(University of Manchester)の共同で研究の成果です。150年前に発掘された始祖鳥(Archaeopteryx)の化石に、米SLAC国立加速器研究所の放射光施設SSRL(Stanford Synchrotron Radiation Lightsource)を使って、高エネルギー蛍光X線法により、化石に含まれる元素を特定したそうです。
始祖鳥の化石が最初に発掘されたのは、ドイツのゾルンホーフェン(Solnhofen)。ゾルンホーフェンの化石といえば、一昨年の第21回 東京国際ミネラルフェアの特別展示だったのですが、サブブログに幾つか写真を載せていますので、良かったらご覧下さい。『行ってきました!第21回 東京国際ミネラルフェア(第2回)』
この始祖鳥の化石は、始祖鳥の骨そのものではなく、長期間押しつけられてできた痕跡化石ではないかと考えられていたそうです。しかし、この分析により3価のリンやなどを含む事がわかり、化石化した羽根の断片も含まれていると分かったんだとか。現代の鳥類の羽根にも3価のリンなどの物質が含まれる事から、恐竜と鳥類の関係を示す化学的な証拠とも言えるそうです。
スプリング8などを使った化石の分析なんてのも、これからの古生物学では珍しくなくなるのかもしれませんね。
今回は、始祖鳥に関するニュースをもう一つご紹介します。14日付の米科学誌サイエンスに発表され『Did First Feathers Prevent Early Flight? (リンク)』に関するニュースです。
この報告によると、始祖鳥や孔子鳥などの初期の鳥とされる種は、羽ばたき飛行はできず、滑空しかできなかったと言うのです。
これは、化石の始祖鳥と孔子鳥の風切り羽根の長さや羽軸の太さ、それぞれの体重を調べ、飛ぶ際に翼にかかる荷重と翼の強度を推定し、現生の4種の鳥類(ユリカモメやモリバト、ワタリアホウドリ、シロエリハゲワシ)と比較した推論です。
現生の4種の鳥類の翼は、全て体重の6~13倍の荷重に耐えられるのですが、羽軸が1ミリ程で非常に細くい始祖鳥は体重の0.55倍、孔子鳥は0.39倍で体重すら支えきれないと言うのが彼らの主張。
恐竜の体重が現在の鳥より軽いか骨の強度が強いって考えは無いのだろうか?と思ったのですが、筆者らもそれは考慮していて、仮に始祖鳥と孔子鳥の羽軸が、現生鳥類とは異なる構造で更に強度があったと仮定しても、それぞれ4倍と2.9倍でしかなく、羽ばたき飛行には十分な強度とはいえないとしています。
でも始祖鳥が現在の鳥より軽いなら更にこの数値は大きくなるかもしれませんね。ただ、この辺は推論にしかなりませんし、骨の強度が弱く、体重が重い種が繁栄して現在の鳥になるってのも違和感があるので、やはり羽ばたき飛行はできなかったのかな?
国立科学博物館の真鍋真研究主幹(古生物学)によれば、羽ばたき飛行ができないとなれば、将来、始祖鳥や孔子鳥の進化上の位置づけを恐竜に分類し直すことになるかもしれないそうですよ。
本当のところは、どうなんでしょうね?
始祖鳥についてはいろいろと議論がありますが、学界の大勢は現在の鳥類の始祖ではないという風になっているとか以前何かで読みました。
by Loby (2010-05-16 00:09)
Loby さん、こんばんは。
ご指摘の通り、始祖鳥は鳥の直接の祖先ではなく、直接の祖先とは近いけど傍流の鳥だとされていますね。
この辺は、まだまだ流動的なので、10年位したら話が変わってるかもしれませんけどw
by optimist (2010-05-17 21:55)
化石の鑑定方法も時代とともに変わっていくわけですね。
始祖鳥など、鳥類の子孫とされる生き物は、最初は飛べなかった物が次第に飛べるようになったのが普通なのかなと思います。
今の状況を見ても、飛べない鳥類の方が圧倒的に少ないですから(鶏は人為的要素が強いですが)。
by 北海道大好き人間 (2010-06-15 14:02)