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水疱瘡 [科学系よもやま話]

4歳の息子が、水疱瘡になってしまいました。まあ、予防接種を受けているので症状も軽く、数日で幼稚園にもいけるはずで、心配はしていません。
でも、多分1歳の娘も発症するんだろうな~(娘も予防接種済みです)。
そういえば、過日、帯状疱疹になったのですが、水疱瘡と帯状疱疹って同じウイルスが原因だってご存知ですか?実は水疱瘡も帯状疱疹も、同じ水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)による感染症なんです。

水痘-帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、水痘(水疱瘡)を発症する事が知られています。その後は免疫を獲得するので、水疱瘡は発症しませんが、体の中の神経節にウイルスが残っていて、体力の落ちた時に、帯状疱疹になるんです。

今日は、私達親子を襲った水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)について、お話しようと思います。
PHIL_1878_lores.jpg
水痘-帯状疱疹ウイルスの電子顕微鏡写真
提供:米国の疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)、Public Health Image Library (PHIL)(ID#:1878(リンク))

水疱瘡や帯状疱疹の症状や、潜伏期間、対処方法なんてのは、医学系の解説に譲るとして、ここでは、水痘-帯状疱疹ウイルスの感染メカニズムなどについてお話します。

実は、疫学フロンティア研究センターの研究グループが、水痘-帯状疱疹ウイルスの神経組織への感染の分子メカニズムを解明したと発表したのは、ほんの半年ほど前の話です。
大阪大学免疫学フロンティア研究センター『水痘帯状疱疹ウイルスの感染メカニズムを解明(荒瀬教授・末永助教らが 米科学アカデミー紀要 に掲載)(リンク)』
水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の表面には様々な糖たんぱく質が存在しています。水痘-帯状疱疹ウイルスと同じヘルペスウイルス属である単純ヘルペスウイルス(HSV)の場合は、グライコプロテインBという糖たんぱく(gB)が、細胞表面のPILRというタンパク質と会合することで、膜融合を誘導し細胞内に進入して感染することが知られていたそうです。

この研究報告では、水痘-帯状疱疹ウイルス(及びHSV)では、膜癒合を起こすのに、神経細胞の軸索が伸びるのを制御するMAG(Myelin-Associated Glycoprotein)という神経突起にとりつくことで、感染するとされていました。

このMAGは脊椎動物の脳、脊髄、末梢神経組織に特異的に分布する細胞表面分子なので、水痘-帯状疱疹ウイルスが神経に入りやすい理由も説明できるとしています。
実際に、帯状疱疹は水疱瘡が治った後に、ウイルスが後根神経節に退いていたものが、免疫力が衰えたときに、再活性化する事で発症します。この時、ウイルスは後根神経節から、皮膚の感覚性ニューロンの軸索を伝って末梢に移動します。すると感覚神経の経路に沿って、特徴的な線状の疱疹を作るってわけです。

グライコプロテインB(gB)とMAGが会合することで、感染が起きるわけですから、これを邪魔する抗体を加えると感染を抑える事が期待できます。研究者らは、培養細胞の実験でこれを確認しました。今後、感染を防いで痛みを和らげる新薬が登場するかもしれませんね。
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北海道大好き人間

私も小3の時に水疱瘡になったことがあります。この時には風疹も流行していました。また、これより前にははしかもかかっています。
予防接種も、受けさせられるだけ受けさせた方がいいですね。
by 北海道大好き人間 (2010-06-15 18:33) 

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