甘~く香る「竜の涎」 幻の香料、大哺乳類展で公開へ [科学系よもやま話]
現在、国立科学博物館で開催中の『大哺乳類展~陸のなかまたち~』に続くのが、このニュースの『大哺乳類展~海のなかまたち~(リンク)』です。
因みに、『陸のなかまたち』は6月13日(日)までで、『海のなかまたち』の開催期間は、7月10日(土)~9月26日(日)です。※但し7月12日(月),9月6日(月),9月13日(月)は休館日
この記事によると、高価な香料として有名な『龍涎香(りゅうぜんこう)/Ambergris』と、そこから抽出し、熟成した精油が展示されるんだそうです。ということは、会場に甘い龍涎香の香りが漂うの?単に瓶に入った精油をただ展示って、そんなわきゃ無いと思うのですが、どうんなんでしょうね。
『大哺乳類展~海のなかまたち~』については、また詳しく取り上げるとして、折角なので、今日は龍涎香についてお話しようと思います。
さて、この龍涎香。身も蓋も無い言い方をすれば、マッコウクジラの腸内にできた結石です。独特の芳香があるこの結石には、 タコやイカの硬い嘴が核になっている場合が多いそうで、消化できなかったエサを消化分泌物により結石化させ、排泄しているのだと考えられているそうです。
マッコウクジラから排泄されたこの結石(龍涎香)は軽く、海水に浮くため、プカプカと海岸に漂着します。なんでも商業捕鯨による鯨の解体時にも入手できたそうですが、商業捕鯨が禁止された後は、このような漂着した龍涎香をゲットするしかないようです。なるほど貴重品ですね。
因みに、龍涎香という名は、古代中国で『龍のよだれが固まったもの』と考えていたからだとか。 日本にも室町時代には伝わっていたらしいです。
さて、そんな貴重な香料である龍涎香。当然、現代の科学者がほっとくわけはありません。その香の主成分について調べられ、人工的に合成もされてたりします。
龍涎香の主成分は、コプロスタノール(ステロイドの一種)とアンブレイン(トリテルペンの一種)です。 独特の香りは、このアンブレイン(Ambrein)が酸化・分解されて、様々な香成分を生成することにより得られます。だから、アンブレインを多く含む龍涎香ほど、品質が高いとされるそうです。でも、純粋なアンブレイン(Ambrein)は無臭。あくまで酸化分解してできた生成物が香の素なんです。
分解生成される香成分は、具体的には、Ambrox,Ambra oxide,α-Ambrinol γ-Dihydroionone,γ-Coronal,Dehydroambra oxide などが挙げられます。
その中でも、特にAmbrox(アンブロックス)は、持続性が強く、香りも強いので、龍涎香の香りを作るのに、非常に重要な成分です。
ところで、Ambrox®は、フィルメニッヒの登録商標名で、化合物名としては、(3aR,5aS,9aS,9bR)-dodecahydro-3a,6,6,9a-tetramethylnaphtho[2,1-b]furan となります。長ったらしくて、見ただけじゃどんな構造か分かりませんよね?
構造式だとこんな感じです。意外とスッキリでしょう?
因みに、分解前のアンブレイン(Ambrein)の構造は、というと
このように、商業的にペイできるとなれば、どんな成分も特定し、合成してしまうんですから、人間の欲望って凄いな~なんて思っちゃいました。
因みに、『陸のなかまたち』は6月13日(日)までで、『海のなかまたち』の開催期間は、7月10日(土)~9月26日(日)です。※但し7月12日(月),9月6日(月),9月13日(月)は休館日
この記事によると、高価な香料として有名な『龍涎香(りゅうぜんこう)/Ambergris』と、そこから抽出し、熟成した精油が展示されるんだそうです。ということは、会場に甘い龍涎香の香りが漂うの?単に瓶に入った精油をただ展示って、そんなわきゃ無いと思うのですが、どうんなんでしょうね。
『大哺乳類展~海のなかまたち~』については、また詳しく取り上げるとして、折角なので、今日は龍涎香についてお話しようと思います。
さて、この龍涎香。身も蓋も無い言い方をすれば、マッコウクジラの腸内にできた結石です。独特の芳香があるこの結石には、 タコやイカの硬い嘴が核になっている場合が多いそうで、消化できなかったエサを消化分泌物により結石化させ、排泄しているのだと考えられているそうです。
マッコウクジラから排泄されたこの結石(龍涎香)は軽く、海水に浮くため、プカプカと海岸に漂着します。なんでも商業捕鯨による鯨の解体時にも入手できたそうですが、商業捕鯨が禁止された後は、このような漂着した龍涎香をゲットするしかないようです。なるほど貴重品ですね。
因みに、龍涎香という名は、古代中国で『龍のよだれが固まったもの』と考えていたからだとか。 日本にも室町時代には伝わっていたらしいです。
さて、そんな貴重な香料である龍涎香。当然、現代の科学者がほっとくわけはありません。その香の主成分について調べられ、人工的に合成もされてたりします。
龍涎香の主成分は、コプロスタノール(ステロイドの一種)とアンブレイン(トリテルペンの一種)です。 独特の香りは、このアンブレイン(Ambrein)が酸化・分解されて、様々な香成分を生成することにより得られます。だから、アンブレインを多く含む龍涎香ほど、品質が高いとされるそうです。でも、純粋なアンブレイン(Ambrein)は無臭。あくまで酸化分解してできた生成物が香の素なんです。
分解生成される香成分は、具体的には、Ambrox,Ambra oxide,α-Ambrinol γ-Dihydroionone,γ-Coronal,Dehydroambra oxide などが挙げられます。
その中でも、特にAmbrox(アンブロックス)は、持続性が強く、香りも強いので、龍涎香の香りを作るのに、非常に重要な成分です。
ところで、Ambrox®は、フィルメニッヒの登録商標名で、化合物名としては、(3aR,5aS,9aS,9bR)-dodecahydro-3a,6,6,9a-tetramethylnaphtho[2,1-b]furan となります。長ったらしくて、見ただけじゃどんな構造か分かりませんよね?
構造式だとこんな感じです。意外とスッキリでしょう?
因みに、分解前のアンブレイン(Ambrein)の構造は、というと
このように、商業的にペイできるとなれば、どんな成分も特定し、合成してしまうんですから、人間の欲望って凄いな~なんて思っちゃいました。
>消化できなかったエサを消化分泌物により結石化させ、排泄しているのだと考えられているそうです。
人間の結石は、激痛だそうですが、抹香鯨はどうなのでしょうね。
それにしても、漂流する竜涎香を見つけるのは大変そうですが、誰がどうやって見つけるのでしょうね。
by アヨアン・イゴカー (2010-05-30 09:52)
アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
鯨に痛みがあるのか?ですか~どうなんでしょう。
こればかりは、鯨に聞くしかなさそうですね^^;
漂着した物は、極稀に拾われてニュースになるそうですよ。
by optimist (2010-05-31 21:51)
>会場に甘い龍涎香の香りが漂うの?単に瓶に入った精油をただ展示って、そんなわきゃ無いと思うのですが、どうんなんでしょうね。
そのままでは香りが強すぎるでしょうから、何らかの方法で薄めるのではないかと思います。
この記事を読みながら、ジャコウジカの分泌物「麝香」を思い出しました。
by 北海道大好き人間 (2010-06-15 18:37)