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火星に「水の流れ」示す鉱物、ただし「海」はなかった? 欧研究 [科学系よもやま話]

6月25日の欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)による発表『Wet era on early Mars was global(リンク)』が、このニュース。

その内容は、火星の北方平原でケイ酸塩水和物を発見したというもので、火星に、かつて水の流れがあった証拠であり、生命体の生存に適する時代の可能性を示唆しています。しかし、そのモデルは水たまりと水の湖。ニュースにもあるように、6月13日付けの英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された、火星の表面の3分の1以上が巨大な海に覆われていたとする発表とは相反する見解です。
Abstractはこちら『Ancient ocean on Mars supported by global distribution of deltas and valleys(リンク)』

はたして、初期の火星にあったのは、大海洋なのでしょうか、湖沼だったのでしょうか?
両者の主張と根拠を簡単に整理してみましょう。

火星の表面で発見された52箇所の三角州の堆積物の半数以上がほぼ同じ高度でみつかったことから、これらの同高度の三角州に面して、巨大な海洋が存在していたと推定したのが、米コロラド大学ボルダー校(University of Colorodo in Boulder)のGaetano Di Achille氏とBrian Hynek氏の研究チーム。

計算される海洋は、火星表面の36%、体積は1億2400万k㎥。約35億年前には、地球のような降雨、水流、雲の形成、氷の形成、地下水といった水循環が火星にあったとしています。

これに対して、パリ大学(University of Paris)の Jean-Pierre Bibring氏は、ケイ酸塩水和物が発見された事で、火星に大規模な水の流れがあった可能性はあるが、それは40億年前の事で、35億年前には火星にはすでに大気がなく、水が液体の状態で安定して表層に存在する状態ではなかったと主張しています。

これらの鉱物が、これまでは南方の高地表面で発見されていました。しかし今回、北部の平原では、多数の衝突クレーターでのみ、これらの粘土鉱物を確認できたからです。つまり南半球の高地で発見された粘土鉱物は約40億年前の物とされているのですが、その後火山活動で表面が埋められたと考えられる北部低地では、表面に粘度鉱物が無いのです。北部平地では、溶岩が固まった表面を貫いたクレーターで粘土鉱物が発見される。

ということは、火山活動後の35億年前に水があったとは考え難いという主張です。

火星には、これからも探査船やローバーが送られる事になっています。果たしてどちらの主張が正しいのか、はたまたどちらも間違いなのか?これからの研究発表が楽しみです。

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コメント 2

北海道大好き人間

どちらの主張が正しいか証明された後、「では、どうして火星から水が消えてしまったのか?」という次の段階まで進むのには、また時間がかかりそうですね。
by 北海道大好き人間 (2010-06-29 02:56) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
地球の創世記~生物発生まででさえ、異論がある位ですから、火星について説が定まるのは、まだまだ当分先でしょうね^^;
by optimist (2010-06-30 22:15) 

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