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EIT(Extreme ultraviolet Imaging Telescope)とは [科学系よもやま話]

今日は、SOHOに搭載されている、EIT(Extreme ultraviolet Imaging Telescope;極紫外線画像化望遠鏡)について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
といっても、観測対象の太陽につて知らないと、なぜ極紫外線での観測が必要なのかが、分からないと思いますので、基本的な太陽表面の構造から説明しますね。

まず、太陽の表面は、光球,彩層,コロナに分けることがでいます。更に、彩層の最上部の遷移層を含め4分する場合もあります。

光球は、可視光で観察出来る太陽の表面で、厚みが100km程の層です。その温度は4500~6000℃と言われています。黒点などの構造は、この光球でみられます。
彩層は、光球とコロナの間にある層で、2000km程の厚みがあります。その温度は4500~10000℃と言われています。
そしてコロナは、太陽大気の最外層で、その温度は数百万℃という非常に高温です。太陽表面から離れるほど温度が上昇するという不思議な現象は、については幾つかの理論の提唱とその実証が進められています。
※このブログでも『太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)』でちょこっと触れています。

さて、このような構造について、詳しく調べる為には可視光だけでは不十分です。例えば、コロナは非常に高温ですが、希薄でもあるため、可視光で観測しようとしても、可視光域での放射が太陽面からの放射のおよそ100万分の1と、とんでもなく弱い。そのため、太陽表面からの放射にまぎれて観測できません。
そこで登場するのが、X線や極端紫外線による観測です。コロナの温度で強く光を放つのは、可視光領域の波長ではなく、軟X線や極端紫外線といわれる波長領域の光だからです。

ただ、地球上では磁気圏や大気の影響で、これらの光は吸収されてしまい、十分な観測が出来ません。そこで、宇宙空間で直接観測するという訳です。
EIT 171(左)とEIT 195(緑)
SOHO EIT 171.jpgSOHO EIT 195.jpg
EIT 284(左)とEIT 304(緑)
SOHO EIT 284.jpgSOHO EIT 304.jpg
 
さて、測定される波長ですが、実は鉄やヘリウムの多価イオン電離輝線に相当します。鉄は、太陽大気中に豊富に含まれる上、様々な電離状態の輝線が存在します。生成温度によって電離状態が変わるので、鉄の電離輝線の波長で観測することで、特定温度の場所がどう分布しているかを捉える事ができるんです。

具体的には、195Åの波長だと鉄の+12イオンからの放射で、約150万℃です。171Åの波長だと鉄の+9,+10イオンからの放射で、約90万℃。284Åの波長は+15イオンからの放射で、約200万℃です。また、304Åの波長は鉄ではなく、ヘリウム+2イオンからの放射で、8万℃という具合です。

SOHOの後に打ち上げられた、NASAのSDO(Solar Dynamics Observatory)や、日本の『ひので(SOLAR-B)』には、更に高解像度、高感度な装置が搭載されています。しかし搭載している極紫外線望遠鏡は、この鉄の電離輝線に相当する波長で、特定温度領域の分布や形状を捉えているのは同じでで、それぞれ感度や解像度、捉える波長の違いはあるにすぎません。

2回にわたって、Web上で公開されている太陽観測画像の見方をご紹介しました。あくまで素人による執筆なので、間違いなどお気づきの方は、ご指摘いただけるとありがたいです。
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アヨアン・イゴカー

>コロナは、太陽大気の最外層で、その温度は数百万℃という非常に高温
これは見当も付かない猛烈な温度ですが、これだけの温度では、物質はどのような状況になるのでしょう?「最外層には摂氏数百万度になる点がある」と言う意味でしょうか?疑問ばかりが湧き上がります。
by アヨアン・イゴカー (2010-08-08 16:45) 

yablinsky

可視光線以外の写真は単色(白黒)のイメージが強いです。たとえばX線=青、極端紫外線=赤とすれば、どんなカラー写真になるか気になるのは私だけでしょうか。素人意見ですみません。

by yablinsky (2010-08-08 23:05) 

北海道大好き人間

一台のカメラだけでは撮影できないところが、この太陽の奥ゆかしさ(?)みたいなモノですね。
by 北海道大好き人間 (2010-08-09 23:32) 

optimist

アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
数百万度だと、物質はプラズマ化しているそうです。太陽表面から噴出したプラズマ化した大気が超高温で、本体はそれ程でもないって事だそうです。

by optimist (2010-08-11 00:39) 

optimist

yablinsky さん、こんばんは。
実際にX線観測された画像や紫外線観測された画像と可視光の合成写真などがNASAなどで公開されています。
実際の可視光の写真ではありませんが、様々な情報を視覚的に捉える事ができる点が好まれるのでしょうね。
by optimist (2010-08-11 00:41) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
これだけ近くにある恒星と言うのは、稀・・・というか、やはり太陽は特別な存在ですから、様々な観測が行われるのでしょうね。
by optimist (2010-08-11 00:42) 

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