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北米で集団発生の強毒カビ 感染患者、国内で初確認 [科学系よもやま話]

日本国で、初めてガッティ型の高病原性クリプトコックス症患者が確認されたというニュースです。
高病原性クリプトコックス症は、病原性真菌の一種、クリプトコッカス属による感染症で、肺感染症や脳髄膜炎を発症する病気です。日本では、クリプトコックス・ネオフォルマンス(C. Neoformans)による感染が一般的なんだそうです。

この菌は、樹木やその付近の土中に生息して、鳥の糞で増殖した物が、乾燥して空中に浮遊したのを吸い込むことで、肺に感染します。これが血液に運ばれて、各種臓器に拡がるのですが、中枢神経に移行すると髄膜炎症状を引き起こすらしい。

ただし、本来C. Neoformansは病原性が弱く、健康な人は感染せず、抵抗力が落ちたときに感染することが多いのに対して、今回問題になっているクリプトコックス・ガッティ(C. gattii)は、発病率、死亡率が高いとされている上、感染者の多くが健常者であるという危険な真菌なんです。お~怖い。

もともとC. gattiiは、オーストラリアを中心とする熱帯・亜熱帯地域に生息していたと考えられるのですが、バンクーバー島やオレゴン州で集団感染を引き起こして、大問題になった事もあります。遺伝子タイプで4つ(VGI~IV)に大別されますが、国内発感染となったのはVGII型。バンクーバー島で集団発生した株と同一の株であることが確認されたそうです。人や物の移動が激しい現代、もしかしたら、他の株も含め、既に日本で繁殖している可能性も否定できませんね。
 本来真菌は病原性が弱いのですが、近年は医学の進歩が仇となって、増加しているそうです。抗生物質剤の発達で、病原性の強い細菌による死亡が減った結果、抵抗力が弱い患者も生存できるようになった事。また、副腎皮質ステロイド剤などの副作用や、白血病や癌治療で使われる化学療法による、免疫力が低下する事により、真菌が病原性を発揮できるようになってきているそうです・・・皮肉な話ですね。
 
また、C. Gattiiのように、本来日本には常在しない真菌に海外で感染した者が、 日本国内で把握されたという輸入真菌症も増えています。米国南西部などのコクシジオイデス・イミティスによるコクシジオイデス症、米国南部や中南米などでみられるヒストプラスマ・カプスラーツムによるヒストプラスマ症、ブラジルのパラコクシジオイデス・ブラジリエンシスによるパラコクシジオイデス症などが、そうです。
これらの輸入真菌症は、 健康な人に発生し、病原性の強い菌が多いので、私達にも無関係とはいえませんね。

このニュースを見て、真菌症について調べてみたので、次回ご紹介します。


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コメント 4

yablinsky

恐ろしい世の中です。昨年も新型インフルエンザがあっという間に世界に広がりましたね。あんな感じで恐ろしい菌が広がるとおもうとぞっとします。
by yablinsky (2010-08-26 07:27) 

optimist

yablinsky さん、こんばんは。
もはや病気も、害虫もなんでも世界中で大発生する世の中なのかもしれませんね^^;
by optimist (2010-08-26 21:13) 

北海道大好き人間

この記事を読んで、MRSAのことを思い出しました。
しかも、健常者にも感染するのが怖いです。
by 北海道大好き人間 (2010-08-30 22:51) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
確かMRSAに効く抗菌薬開発についての記事を書いているはずなので、そのうちご紹介できるかと思います。
なんだか2週間分位まとめてアップしたので、何時アップする予約をしたのか、うろ覚えですけど・・・。
by optimist (2010-09-02 00:20) 

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