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女王バチになる「秘密」は…富山県立大が誘導成分発見 [科学系よもやま話]

今日ご紹介するニュースは、Natureに掲載された論文に関するものです。
Nature『Royalactin induces queen differentiation in honeybees(リンク)』

富山県立大による研究成果だそうですが、ロイヤラクチンと命名された57-kDaたんぱく質が、幼虫を女王バチへ誘導するたんぱく質であることを発見したという物です。

女王バチは、生まれつき決まって居るわけでなく、ローヤルゼリーを与えられた幼虫が女王バチになるという事は知られていました。しかし、をれを決める特定の成分までは知られていませんでした。

この57-kDaたんぱく質は、保存温度と期間により、特異的に分解される物質です。新鮮なローヤルゼリーを与えた幼虫は女王バチになるのに対し、40度で30日間保存したローヤルゼリーを与えた幼虫は、働きバチになるんだそうです。そこで、新鮮なローヤルゼリーと保存後のローヤルゼリーの成分組成の違いを調べ、57-kDaたんぱく質が幼虫を女王バチへ誘導するたんぱく質だと分かったのだとか。

このたんぱく質を幼虫に与えると、働きバチに比べ体が1.5倍程度に大きくなったり、卵巣が発達したりして女王バチの特徴を示したりするのですが、ショウジョウバエに与えても体が2倍近くに成長したり、産卵数や寿命が増えたりと、ハチだけでなく種を超えて作用することも明らかになっています

遺伝的には同じであっても、摂取する物質で大きく、特性が変化するなんて凄いですね。

因みに、富山県立大の生物工学研究センターでは、このロイヤラクチンの生理機能を解析し、ロイヤラクチンが肝細胞に対しRas/MAP キナーゼ経路の活性化によりDNA合成促進作用を示し、更に上皮増殖因子 (EGF) と同様の作用により、肝臓での糖新生の活性化作用を示す事を明らかにするといった成果を挙げているそうです。

人間への応用も含め、今後の展開に期待です。


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コメント 4

アヨアン・イゴカー

大変、面白い記事ですね。
それにしても、40℃で保存しておくということは、自然界でありうるのでしょうか?蜜蜂の巣の温度は、そんなに高いのでしょうか。ふと、思いました。
by アヨアン・イゴカー (2011-05-01 10:54) 

optimist

アヨアン・イゴカー さん、こんにちは。
ミツバチの巣は、夏冬問わず36℃前後の快適温度だそうです。幼虫は分かりませんが、成虫だと50℃近い温度まで耐えるらしいです。
でも、もし巣が40℃を超えると、この論文にあるように、ローヤルゼリーの成分が変化してしまい、その巣では女王蜂が生まれず、働き蜂だけという事になってしまうでしょうから、温度管理は重要そうですね。
by optimist (2011-05-04 13:27) 

北海道大好き人間

ロイヤルゼリーは、以前食べたことがあるのですが、普通のハチミツと違って苦みがあるんですよね。
あの成分を冷蔵庫とがないにもかかわらず一定に保つなんて、凄いですよね。

なお、一連の返答レスは、大変でしょうから直近のものだけで構いません。

by 北海道大好き人間 (2011-05-22 17:39) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
蜂の巣や、蟻塚など、昆虫達の巣の快適さというか、その構造には驚くばかりですね。

コメントへのレスですが、折角のお申し出なので、ありがたくお受けします。
そのうち、思い出したようにコメントするかもしれませんが、まずは直近のものだけレスさせて頂きました。
by optimist (2011-05-23 22:53) 

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