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冷たい第2の地球、土星衛星タイタンの窒素大気の起源を解明 [科学系よもやま話<宇宙の話>]

少々新鮮味み乏しくなってしまいましたが、今日ご紹介するのは、東京大学 大学院新領域創成科学研究科のプレスリリースです。
冷たい第2の地球、土星衛星タイタンの窒素大気の起源を解明-40億年前の太陽系に起きた天変地異(リンク)』

土星の衛星タイタンは、太陽系で地球以外に唯一厚い窒素大気を持つ天体だと考えられています。
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Credit:NASA/JPL/SSI
その地表には-180℃前後と冷たく、液体メタン(メタンの沸点-162℃、融点-183℃)の湖や川が存在し、地球では水の循環しているのに対して、タイタンではメタンが蒸発や凝縮、降雨などにより循環しているのだそうです。
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Credit:NASA/JPL/USGS
このようなメタン循環が可能となっているのは、タイタンに厚い窒素大気がある(地表で1.5気圧)からなのですが、タイタンの表層環境が、いつどのように形成されたのかは謎とされていたそうです。

この発表では、地球ど同じく窒素を主成分とするタイタンの大気は、今から40億年前におきた巨大隕石の重爆撃イベントという、太陽系全体を巻き込んだ天変地異によって形成されたことしています。

この研究論文は、英科学誌『Nature Geoscience(ネイチャー・ジオサイエンス)』に掲載されています。
Replacement and late formation of atmospheric N on undifferentiated Titan by impacts(リンク)』
※Full text は、有料です。
 
従来の説では、タイタンの材料そのものに窒素が含まれていて大気の材料となったとする「材料物質説」や、地球と同じようにタイタンが形成される際の熱や化学反応によって大量に存在したと考えられるアンモニアが窒素に変化したとする「形成時誕生説」が提唱されていたそうです。

しかし、「材料物質説」の場合、窒素が材料物質に取り込まれるのと同じ温度圧力条件で、希ガスも材料物質に取り込まれるため、この説が正しければタイタン大気中には希ガスが豊富に存在するはずである。しかし、カッシーニ探査機による観測の結果、タイタン大気に希ガスはほとんど含まれておらず「材料物質説」が否定されました。

また、「形成時誕生説」の場合、タイタン形成時の熱により、原始大気が形成するのと同時に内部も分化することが予想されるのですが、2010年に発表されたカッシーニ探査機の重力測定結果によると、タイタン内部は分化しておらず、形成時に初期大気を形成するほど温度が上がらなかったことが明らかになっています。つまり、「形成時誕生説」も怪しいとなったのです。

では、どのようなメカニズムでタイタンが窒素大気を獲得したのか?の回答が巨大隕石の重爆撃です。
約40億年前は、後期隕石重爆撃期と呼ばれ、太陽系全体で巨大隕石衝突が頻繁に起きていたことが知られています。月の衝突クレーターの大部分も、この時期に形成しされたと言われています。
この時期、タイタンにも、直径約50 kmにも達する超巨大隕石が、数千回衝突したと推定され、衝突により2000℃を超える高温になった地表のアンモニア氷が熱分解し、窒素が生成されたというのです。

この「重爆撃期形成説」によれば、カッシーニ探査機によって得られた希ガスのデータや内部構造の重力データも無理なく説明することができる点が、従来の説より優れているそうです。

実際に、このような後期隕石重爆撃期が起きたのか?起きたのなら、その原因は何か?
色々と想像をかきたてられますね。

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コメント 2

北海道大好き人間

タイタンはもとより、この地球だってどの様に大記が形成されたのか未解明な部分もありますよね。
でも、タイタンからちきゅうのが発生した過程が解き明かされるかも知れません。

by 北海道大好き人間 (2011-05-22 20:20) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
仰るように、タイタンと地球の類似点、相違点を比較する事で、より地球の大気形成過程を知る事ができそうですね。
by optimist (2011-05-23 22:32) 

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