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黄河大恐竜展<感想編>&プレシオサウルスの胎児化石<ニュース> [一般公開・講演・特別展等紹介]

先日、名古屋市科学館へ行った際に、『夏休み 名古屋市科学館 新館オープン記念 特別展』として開催されている、『黄河大恐竜展(リンク)』を見てきたので、レポートします。

当日券だと一般で1200円。入館料400円に対してプラス700円です。正直、展示面積はもう少し欲しい気もしますが、日本初公開となる全長27mのダシアティタンの全身復元骨格は迫力で、十分満足の行くものでした。
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息子の足で、歩測して56歩。これで、いつでもダシアティタンの大きさを再現できますw

会場内では、他にも日本初公開となるジンタサウルス(半月金塔竜)、キャオワンロング、ペイシャンロング、アウロラケラトプスを始め、9体もの全身復元骨格を見ることができ、なかなか壮観でしたよ。
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ジンタサウルス(左)と、キャオワンロング(右)

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ペイシャンロング

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アウロラケラトプスの全身復元骨格と産状(実物)
 
更に
 
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ランジョウサウルス

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シュウロングの全身骨格と産状

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スジョウサウルス

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シオングアンロングとティラノサウルスの頭骨

この他、鳥に近い種も展示されていました。
白亜紀前期の獣脚類オビラプトロサウロス類の一種、ガウディプテリクス(写真左)は、尾や前足に羽軸と羽枝のある羽毛が見られる上、腹部には胃石と思われる小石も発見されているのだとか。正に鳥ですね。
右の写真は、ジンフェンゴプテリクス。こちらは、2005年にアジアで初めて発見された始祖鳥類の複製。
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骨格標本以外にも、足跡化石や、実物のハドロサウルス大腿骨などに触れるコーナーなどもあり、充実の内容でした。
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なにより空いているのがありがたい。先日の国立科学博物館の恐竜展2011(『恐竜博2011(国立科学博物館)<感想編>』)では、人ごみを掻き分けて進まなくてはいけませんでしたから^^;


ところで、恐竜ではありませんが、鰭竜類の一種であるプレシオサウルスは、卵生ではなく胎生だったのでは?という論文が12日の米科学誌Scienceに発表されるとニュースになっていました。
Sea Monster Had a Bun in the Oven(リンク)』

折角なので、今日は2本立て、こちらのニュースについても、ご紹介しようと思います。
著者らによれば、1987年に米カンザス州の7800万年前の地層から掘り出され、博物館に保管されていたプレシオサウルスの化石を調べたところ、母親の腹の部分から胎児とみられる骨が見つかったのだとか。胎児は1頭で、母親の体長4.7メートルに対し、胎児と見られる骨は、少なくとも1.5メートルだったそうです。

もともと海生のは虫類は、ウミヘビ亜科の種が胎生であるように、魚竜類やモササウルス類の他、鰭竜類も胎生だったとする考えが支持されていました。
それは、有羊膜卵は水中では死滅してしまうためです。羊膜は、陸上で大型の胚が呼吸することに適した進化なのですが、その対価として、水中では生きられません(※朝日新聞 ののちゃんのDO科学『カメはなぜ水中(すいちゅう)に卵(たまご)を産(う)まないの?(リンク)』で、分りやすく解説されています。)。そのため爬虫類は、海中での胎生かウミガメのように卵を産みに陸地で産卵するか、或いはウミヘビのように胎生を獲得し海中で出産するか、という選択を迫られるわけです。
そして、巨大な体を持つほど浮力が得られず、陸地に出産に行くのは困難を伴います。ですから、プレシオサウルスも胎生だったろうというわけです。

余談ですが、AFPBB Newsには、「プレシオサウルスは先史時代に海に生息していた首長竜と呼ばれる爬虫(はちゅう)類で、・・・これまで、陸に上がる能力はなく、産卵によって繁殖していたと考えられてきた。」とありますが、陸に上がる能力が無い場合には、胎生で繁殖したと考えるのが通常で、逆に産卵で繁殖したと考える場合は、陸に上がる能力は(少なくとも産卵できる程度には)あったと考えるのが普通です。でなければ、プレシオサウルスは有羊膜卵であるにも関わらず海中で生存できたとか、産卵した卵が海面に浮き、その状態で孵化することが出来たなんて突飛な考えが必要になりますから^^;

ただ、この直接的な証拠(妊娠中の化石)となると、これまでなかなか得られませんでした。そんな中、2004年に英科学雑誌Naturで、中国産のKeichousaurus hui(貴州竜:ケイチョウサウルス)の標本2体からは、胎児が体内腰部の両側にいることが、報告されています。
Triassic marine reptiles gave birth to live young』(Nature 432, 7015 (Nov 2004))
プレシオサウルスと同じ鰭竜類であるケイチョウサウルスの場合は、2、3頭を同時に出産したようです。※因みに、ケイチョウサウルスの標本には贋作が多いとも聞きますが、真偽の程は知りません。

今回発見されたプレシオサウルスの胎児が一頭であることと、その大きさから、おそらく一度に生むのは1頭だと著者は考えています。そして、シャチや小型のクジラなど、群れを作って子育てをする現代の生き物に近い生活をしていたのではないかと推測しているのだそうです。

群れを成して狩をする恐竜の姿は、近年マプサウルスなどでも議論されています。今後の研究によってどのような説が支持されるかは分りませんが、今のサバンナのライオンのような、或いはシャチのような群れで生きる恐竜(※プレシオサウルスは恐竜ではありませんが・・・)も居たと考えるのが、素直な気もします。
いずれにしても、今後の研究成果が楽しみです。





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コメント 4

北海道大好き人間

ちょっと趣旨が違いますが、あまりに会場が広いと、大きな展示物でもその大きさを実感できなくなってしまうと思います。
今年からお台場の東京ビッグサイトに会場を移す東京モーターショーでも、そんな感じでした。
特に、床面積よりも天井の高さによって印象が変わりますね。

by 北海道大好き人間 (2011-08-13 23:57) 

アヨアン・イゴカー

この記事で化石の研究も、随分進化してきている、と感じました。
病気のことや、寿命のこと、捕食のこと、睡眠のこと、排泄のことなど、新たに発見される化石から、或いは今までの化石を更に別の角度から調査することで判明してくるのでしょうね。
by アヨアン・イゴカー (2011-08-14 08:41) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
確かに、大きさって展示物のサイズや置き方でも印象が変わるし、空間の広さの印象は天井の高さで変わりますよね。
家を建てるときの基礎だけ見ていると、小さく感じるのに、壁ができて入ってみると、思ったより大きかったりとか。
by optimist (2011-08-18 23:13) 

optimist

アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
化石については、近年X線写真やCTなど、様々な装置を駆使して分析されていますし、これから様々な発見がありそうで楽しみですね。
by optimist (2011-08-18 23:15) 

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