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土星の衛星タイタンの大気循環シミュレーション [科学系よもやま話<宇宙の話>]

NASA(アメリカ航空宇宙局)が公開した、土星探査機カッシーニ(Cassini)の狭角カメラによる写真が、ニュースになっていました。
PIA14591-br500.jpg
Credit:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
土星の輪の内側から撮影した土星の衛星です。大きいほうがタイタン、小さいほうがテティスです。

太陽系の惑星は、どれも様々な表情を見せてくれますが、個人的には、その中でも、土星が一番好きです。
あのリングがなんとも幻想的ですよね~♪

そういえば、タイタンは97%の窒素と2%のメタンで構成された厚い大気があり、湖や雨という形でメタンが循環していることが知られています。そんなタイタンの大気循環をシミュレートした論文が、科学雑誌Natureに掲載されていたので、ご紹介します。

Polar methane accumulation and rainstorms on Titan from simulations of the methane cycle(リンク)』(Nature 481,58–61(05 January 2012) ; doi:10.1038/nature10666)


この論文によれば、135タイタン公転周期(約3000年)の、タイタンの大気やメタンの循環を3次元シミュレーションした結果、これまで謎とされていた地形などを上手く説明できたと言うのです。

謎と言うのは、メタンの湖が極付近、特に北半球に多く集まっている理由です。他にも、ここ10年ほど南半球に雲が固まっている現象や、乾いた赤道付近にみられる浸食地形なども上手く説明できるそうですよ。

例えば北極にメタンの湖が多いのは、地球の氷が極付近にあるのと同様、極付近では受け取る太陽光が少ないためメタンが液体として存在しやすい事によるとしています。では、なぜ南極より北極に多いかと言えば、母星である土星が楕円軌道を描くためだと言うのです。
土星が太陽から遠いところで、タイタンの北半球が雨季である夏を迎えるのですが、距離が離れた地点では速度が遅いために南半球に比べ、夏の期間が長いのだとか。勿論、南半球の夏は短い分、太陽に近いので、激しくメタンの雨が降るのですが、結局期間が長いほうが湖の数が多くなるのだそうです。

また、近年南半球に雲が固まっているのは、丁度今までタイタンの南半球が夏だったからだと推測しています。

赤道付近の浸食地形ですが、高温で乾いた場所だと考えられる赤道付近に、なぜこのような地形が多数存在するのかと言えば、タイタンの春分や秋分のころ赤道付近では、激しい雨が降るからだそうです。
基本的に乾燥した地域ではあるのですが、この時期に降る雨が激しいために、浸食地形ができていると考えられるのだとか。

これらの推測が正しいかどうか、今後のシミュレーション結果と観測結果が一致するかで検証できそうです。
シミュレーションによれば、タイタンは季節が移り変わり始めていると考えられ、これからは北極付近で雲が形成され、15年にわたって北半球に雲が固まり、湖の数も増えると予想されています。

今後の、カッシーニの観測結果が楽しみですね。
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コメント 2

北海道大好き人間

実際に行ってみないとわからないのでしょうが、どちらかの極にしか氷の様な物が存在せず、もう一方の極は、地球で言うところの温帯みたいな状態なのでしょうか?
今後の研究の成果が楽しみです。


by 北海道大好き人間 (2012-01-12 12:31) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
夏側の極でメタンが蒸発したり雨となって降ったりするようです。
とはいえ、大気組成も湖の組成も全く地球とは異なる環境ですから、実際に目にしたら、どんな雰囲気なのか想像すると楽しいですね。
by optimist (2012-01-19 23:44) 

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