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単原子トランジスタ [科学系よもやま話<新薬・新技術>]

今日ご紹介するのは、ネイチャー・ナノテクノロジー(電子版)に発表された、この論文。
A single-atom transistor(リンク)』(Nature Nanotechnology(2012) doi:10.1038/nnano.2012.21)
nnano.2012.21-f1.jpg
図は、論文中のFigure 1で、単原子トランジスタのSTM(走査型トンネル顕微鏡)画像と、作成方法の概念図。

上のSTM画像、いったい何だと思いますか?なんとリン原子1個のトランジスタなんだそうです。まさに、世界最小のトランジスタ。微細加工技術、ここに極まれりって感じです。

この単原子トランジスタを作るのに用いた方法は、水素レジストリソグラフィというもの。一応、簡単に説明しますね。

まず、きれいなシリコン表面を水素終端してから、STMで適切な電圧をかけ、ピンポイントで水素原子のみを吹き飛ばします。
ここにホスフィン(PH3)を反応させると、水素原子が吹き飛ばされたシリコン原子と選択的にホスフィンが反応して、Si-PH2結合を作ります(上図のC-Ⅰ)。
これを350℃に加熱すると,リン原子がシリコン原子と置換され、局所的に1個のリン原子をドープできるという訳です(上図のC-Ⅴ)。

勿論、今回の技術は基礎的なもので、直ぐにこれを使った、超微細なコンピューターが登場する訳ではありませんが、原子1個を取り扱うような加工が可能な世界になったんだと思うと、感動を覚えます。



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コメント 4

david

すごいね、原子の微細加工、進歩の速さ、ちょっと恐ろしい。
by david (2012-02-22 10:36) 

般若坊

本当にすごいですね・・・今は空想科学的なワープという概念も、案外手短にあるのかも・・・あっという間に宇宙空間を 横切れる技術も夢ではない?
by 般若坊 (2012-02-22 10:49) 

北海道大好き人間

トランジスタといえば電気(電子)工学ですが、生物学とかにも応用される可能性もありそうですね。

by 北海道大好き人間 (2012-02-22 15:32) 

optimist

david さん、こんばんは。
普通の人の感覚がついていけない速度で技術が進歩している気はしますね。感覚というか倫理観というか世界観がなかなか伴わないのは問題かもしれません。

般若坊さん、こんばんは。
もしかしたら近い将来・・・なんて思っちゃいますよね。

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
生物学の場合は、生体内のたんぱく質や化学物質の挙動を把握したりするのに、やはり分子レベル、原子レベルの解析を使っていますし、様々な分野で恐ろしい速さで技術が進歩しているのは間違いなさそうです。
by optimist (2012-02-24 00:35) 

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